そして、政府の支援の対象には当然映画も入っています。かつ『パラサイト』のポン・ジュノ監督の最初のヒット作品が2003年の『殺人の追憶』であることを考えると、ポン・ジュノ監督は韓国のコンテンツ政策の恩恵を被った第一世代であると考えられるのではないでしょうか(正確には、李明博政権下の韓国政府は、自国に批判的な映画をつくる製作者たちをブラックリストに載せ、それらの人たちへの公的支援を打ち切るという弾圧を行なっていたので、その時期は公的支援が打ち切られていました)。
 
 映画以外にも、2018年に韓国のBTS(防弾少年団)が米国のビルボード200(アルバムチャート)でアジア圏のアーティストとして史上初の第1位に輝くなど、今になって考えれば、韓国のコンテンツが米国市場で成功を収めている背景には、韓国政府の戦略的なコンテンツ強化策があったのです。

日本の「クールジャパン政策」は
なぜ目立った成果を出せないのか

 ここで、1つの疑問が生じます。韓国政府の動きを真似て、日本でも2000年代からいわゆる「クールジャパン政策」に総称されるコンテンツ強化策が講じられているのに、なぜ日本ではそこまで目立った政策の成果が現れていないのでしょうか。

 紙幅の関係で簡潔に書くと、韓国と比べて日本は才能ある個人よりも企業を支援の対象とし、かつ税金を原資にしていることを理由に、短期的な成果を求め過ぎるからではないかと思います。

 たとえば、韓国で映画が制作される場合、映像専門投資組合が組成されて、そこに民間資金と政府資金が投入されます(古い数字ですが、2005年段階では韓国映画の総制作費に占める財政資金の割合は19%に上りました)が、財政資金は損失を優先負担する取り決めになっており、政府が映画制作のリスクを優先的に負っているのです。

 それに比べると、たとえば日本政府のクールジャパンファンドは、政府が721億円出資と規模こそ大きいですが、損失が出ると野党や世論の批判がすごいので、リスクの大きい投資はほぼ無理です。また、文化庁の微々たる文化振興予算は個人を対象としていますが、クールジャパン政策の胴元である経産省の予算は企業を対象としたものばかりです。

 これでは、コンテンツ政策の成果で日韓に大きな差が出てしまうのはやむを得ないと思います。