そんな医療機関では、必ずしも十分な医学的根拠がそろっていなくても、学会などの治療ガイドラインが未整備であっても、その治療の効果・効能を過大に強調している。一方で、治療にともなう副作用、手術の合併症のリスクの話は曖昧なことが少なくない。

「派手な広告による集客のため、効率的に多数の患者をさばくことになり、経験不足の医師でも現場に投入されている。これらが医療被害発生の要因となっているとも聞いています」と宮城弁護士は説明する。

 また、「広告に無料説明会や無料相談、無料カウンセリングと書いてあり、参加したところ、施術を受けるまで帰れなかった」「インターネットでお試しのサプリメントを購入した。やめようと思っていたところ、2回目が届いた。最低4回の定期購入だった」などの相談もあったという。

 近年、「詳細はこちらへ」とウェブサイトへ誘導される形が増えている。それは利用者が自分から入手した情報である場合、広告規制にのっとっていれば広告が許可されるからだ。ここも落とし穴の一つだ。

医療被害への対策
国民への情報発信を強化

 これらの医療被害に対して、国や関連企業も看過できないと考えている。

 例えば、グーグルは検索機能の健全化に乗り出し、誤解を招く医療広告は上位に掲載されないように工夫している。だが、その結果「YouTubeやInstagramなど検索機能に引っかからないツールでの不適切な情報が増えている」とインターネットのSEO(検索エンジン最適化)に詳しいJADE取締役の辻正浩さんは指摘する。

 2017年には医療法が改正になり、従来の「情報提供」から「広告」とみなされるようになり、医療機関のウェブサイト、メールマガジン、申し込みにより送付されるパンフレットなども規制対象になった。特に、虚偽広告は医療消費者に判断を誤らせるとして、医師免許剥奪、および、刑罰(罰金・懲役)が科せられる。この広告規制の内容から、悪徳医療機関を見分けることができる(表参照)。

広告規制の内容から悪徳な医療機関等を見極めることができる
広告規制の内容から悪徳な医療機関などを見極めることができる
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 例えば、人間の体は非常に複雑で個々でも異なるため、同じ病名と診断され同じ治療を受けても、同じ結果になるとは限らない。不確実なことが多く、医療には限界もある。このため、「必ず成功する」「絶対に安全な治療」「がんが絶対に治る」と記載してしまう医療機関は広告の段階から誠実ではない。

 さらに、厚労省では3年前からウェブサイトの監視を強化するための「医療機関ネットパトロール」事業を実施している。市民がウェブサイトで「医療広告ガイドライン」に違反する不適切な表示や表現を見つけたら、その内容を通報するという仕組み。厚労省の発表資料によると、2018年度のネットパトロールへの通報件数は8358件だった。

 厚労省から2017〜18年の同事業を委託された日本消費者協会では、通報内容を専任の消費生活コンサルタントが確認した。ホームページのどこに違反内容があるか、広告で必要な要件は記載されているかなどを目視で丁寧に確認後、その内容を医師と弁護士で構成される諮問委員会で広告規制違反かどうかを判定した。

厚労省からの通知
厚労省からの通知。医療機関ネットパトロールで広告規制違反と判定された場合、このような通知が発信される

 違反と判定された医療機関には通知(上の写真参照)を出して改善を求めた。2018年度は1191の医療機関へ送った。この中には通報以外にも、同協会が監視としてキーワード検索をした結果も含まれている。

 さらに、一定期間後、再度、当該の医療機関のウェブサイトを確認し、改善されたかどうかをチェックした。その結果、約8割が改善に応じたという。