新型肺炎と
“灰色のサイ”のリスク

 新型肺炎の感染が拡大するに伴い、中国では経済の先行き懸念が高まり、企業の資金繰りにもかなりの影響が出ているとみられる。また、株式、不動産などの資産価格への影響も懸念され、金融市場の安定感にも変化が現れつつあるようだ。その一つとして、“灰色のサイ”と呼ばれる債務問題への懸念がある。

 春節の連休明け以降、中国政府は感染対策の徹底を各企業に求め、生産ラインの稼働が遅れている。これは、中国にとって痛手だ。中国では過剰生産能力が顕在化している。景気の減速も重なり、企業や地方政府の債務は膨張している。債務のリスクを抑えるには、とにかく生産を続け、企業収益を確保しなければならない。それが難しくなると信用リスクは上昇するだろう。

 信用不安などを食い止めるために、中国政府はかなり強力に資産価格を支えようとしているとみられる。春節の連休明けとともに、中国の本土の株式は大きく下げて取引が再開された。その後、中国本土株は徐々に持ち直している。チャートを見ると、時折、急速に株価が一本調子で上昇するなど特異な動きが目立つ。この動きは、一部の投資家に先行きへの安ど感を与えているだろう。

 この動きに関して、市場参加者の間では、“国家隊”と呼ばれる公的資金などを用いた株価の下支え措置が影響しているとの見方が多い。当局が大手投信会社に株を売らないよう要請したとも報じられている。共産党政権は、株価安定に神経をとがらせているといえる。

 中国の株式市場における個人投資家の存在感は大きい。2016年、上海取引所の全取引に占める個人の割合は約86%だった。新型肺炎の感染拡大から生産活動をはじめ中国経済に下押し圧力がかかれば、信用不安などから株を売る人が増えるだろう。それを受け、“売るから下がる、下がるから売る” という負の連鎖が起き、売り圧力が不動産にも波及する可能性がある。

 不動産バブルの崩壊や景気減速への懸念がさらに高まると、資金を海外に持ち出そうとする人が急増するだろう。そうしたリスクを抑えるために、中国人民銀行は銀行に対する特別融資を行っている。見方を変えれば、当局は金融システムと資産価格の安定を支えることを通して、灰色のサイ問題の懸念封じ込めに必死とみられる。