通いの場介護予防の点から注目されている「通いの場」。体操(運動)が「通いの場」の活動内容の半数にのぼる

高齢者の健康寿命を延ばす?
「通いの場」に高まる期待

「通いの場」という聞きなれない用語が注目されている。昨年5月29日に開かれた「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」の第2回会合で、厚生労働省は「健康寿命延伸プラン」を公表した。その中で、高齢者全体に対する「通いの場」への全国平均の参加率を2017年度の4.9%から20年度末までに6%へ引き上げることを盛り込んだ。

 6月18日に開かれた認知症施策推進関係閣僚会議では、2025年までの認知症施策をまとめた認知症施策推進大綱を決定し、25年度に「通いの場」の参加率を8%とする目標を掲げた。同大綱は新オレンジプランを引き継いだもので、この先5年間の認知症政策の基本となるものだ。

 さらに、6月21日に閣議決定された「骨太方針2019」でも、自治体に財政インセンティブを付けて「通いの場」の拡大を促すよう記した。

「通いの場」がこれほどの政策課題として登場してきたのは、昨年3月20日の第25回未来投資会議での安倍総理の発言からだった。「人生100年時代を迎えて、病気予防や介護予防の役割が増加しており……。介護予防については、高齢者の集いの場の整備を図ります」と、「集いの場」を強調した。「集いの場」とは「通いの場」のことである。

 3月19日には厚労省が小冊子「これからの地域づくり戦略」をまとめ、「通いの場」づくりに熱心な高知市や奈良県生駒市、大阪府大東市などの自治体を列挙して推奨した。

 介護保険と医療保険の制度改定が共に足踏み状態のなか、「救世主」のような扱いで通いの場が出現した。財源難と人手不足が深刻になりつつあり、抜本的なサービス縮減には踏み込めないのが実情で、当事者の高齢者や医療・介護事業者からの反発を恐れたためだ。

 それなら、保険の利用者数を抑制すれば制度の維持が図れる、と考えた。国が打ち出したのが健康寿命延伸論であり、その手段としての「予防」論である。予防に注力し、心身を健康に保てば病院や介護サービスに頼らずに済む。その予防の具体策として、地域住民が運動や会食、趣味活動などで集まる「通いの場」に着目したということだ。

 適度な食事と運動、社会活動があれば健康寿命が延びる、という発想だろう。「予防」を心がければ、病気や介護状態にならない、あるいはなるのを遅らせる。そこで、認知症施策推進大綱や認知症基本法案にも「予防」を大々的に盛り込んだ。