検査が終わると、医師は仁史さんを診察室に呼び「診断の結果、奥様の身体に異常はありませんでした」と告げた。命にかかわる頭痛ではないので、すぐに退院し、帰宅していいという。「妻はまだ、頭が痛いと言っています。あんなつらそうな妻は見たことがありません。本当に帰宅して大丈夫なんですか」と抗議すると、「ひどい片頭痛で搬送されてくる患者さんは決して珍しくありません。鎮痛薬を出しますので服薬して、様子を見てください。痛みはじき治まるはずです。片頭痛は繰り返し起こりますが、心配な異常はありませんから、今後はもう救急車を呼ばなくてもいいですよ」と、突き放された。
引き金は「シャワー」
浴びるたび痛むことが分かった
医師から片頭痛と聞かされた仁史さんは、とりあえずネットで調べてみた。
◎くも膜下出血は、血管が裂けそうになって起きる頭痛なので、あくまでも突発的に頭痛が出現する。そのため患者によっては冷静な方なら、頭痛の出現時刻をはっきりと“秒単位”で記憶していたりする。
◎片頭痛の発作時の頭痛は、血管が拡張して起きてくる頭痛なので、“秒単位”で出現することはまずなく、もう少し緩やかな出現様式を示す。その後、しばらくの間は脈打つような拍動性の頭痛が続く。
◎入浴時間が長いほど血管が拡張して片頭痛がひどくなるため、入浴は短めに。また、お湯が熱いと時間の割に体が温まり血管が拡張するので、風呂は40度以下のぬるめのお湯がいい。
…といった記述が見つかったが、菜奈さんのケースには当てはまらないため、不安は消えなかった。
実際、菜奈さんの頭痛発作はその後も続いた。どうやらシャワーを浴びることが引き金になって頭痛が出現するということが分かったため、2~3日から5日間など、シャワーを控えるようにして様子を見たりもしてみた。だが、「もう大丈夫かも」と期待してシャワーを浴びると、すぐさまあのとんでもない痛みが襲来する。