小売りの売り上げ減は不可避

 その日本では、初動対応が遅れ、すでに大規模に感染が拡大しており、経済的混乱に拍車が掛かっている。

 スーパーマーケットの棚から消えたマスク、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、コメ。新型コロナウイルスによる新型肺炎患者が国内でも多数見つかり、市中ではじわじわとパニックが広がっている。

 トイレットペーパーの買いだめ行動については「マスクと同じ紙の原料を使っているため品薄になる」とのインターネット上のデマが原因とされるが、買いだめによる品薄がさらなる買いだめを引き起こすという悪循環に陥っている。

 販売する側のスーパーがさぞ、空前のもうけとなっているのかといえば、さにあらず。ある業界関係者は「2月最終週の売り上げが好調で、前年同期比で4割上がったところもあるが、利益は全然取れていない」と打ち明ける。

 ティッシュペーパーやトイレットペーパーは客寄せのために特売されることが多く、そもそも利幅が小さい。加えて多くの客が店を訪れるため、店員を増やして対応することになる。「お一人さま1個」を守らない客がいるため、セルフレジを停止させるケースもある。人件費が余計にかかる分、買いだめによってわずかに増えた利益が飛んでいくのだという。

 小売店や外食の現場をさらに混乱させたのは、安倍晋三首相が2月27日に突然打ち出した全国の学校への休校“要請”だ。普段は通学している小学校低学年の児童がいる家庭の場合、パートとして働いている主婦は子供の世話に追われる。また、子供は原則自宅待機であるため、高校生のアルバイト従業員も出勤できない。

 そのためスーパーのライフコーポレーションは、午前9時や9時半だった開店時間を10時に遅らせた。ゼンショーホールディングス(HD)が運営する牛丼のすき家も、一部店舗で、販売する商品を牛丼のみとし、営業時間も見直す。

 また、ただでさえ人手不足が深刻なコンビニエンスストアでは、シフトが綱渡りとなる店舗もある。「それでも24時間営業を強制されるのか」(フランチャイズ加盟店オーナー)との本部への批判の声がすでに出ている。人手確保のために賃金を上げるとなれば業績悪化の要因になる。

 加盟店を巡る苦境には昨年から社会的な関心が高まっており、感染拡大が長期化すれば営業時間の抜本的な見直しが求められる可能性もある。

 北海道では鈴木直道知事が2月28日に「緊急事態宣言」を発し、3月19日まで週末の外出を控えるよう道民に求めた。そのため、週末の繁華街や商業施設は閑散としていた。

 他の都市でもテレワークの増加や“自粛ムード”によって人通りは少ない。3月以降、飲食店や小売店の売り上げの大幅な減少は避けられないであろう。