また昨秋以降の株高は、いわゆる資産効果によって日本人富裕層の消費を後押ししてきた。中国人客の買い物は、数年前の家電や宝飾品の“爆買い”から化粧品にシフトしており、彼らに代わって高額品を買っていたのが実は、株高の恩恵を受けた日本人富裕層だったのだ。
だが、2月下旬に入って、米国内でも感染者が見つかり、ニューヨークダウは大幅に下落し、日経平均株価も急落した。百貨店業界にとって唯一の希望の光だった彼らの消費にも、今までのように期待できなくなった。
小売業同様、外食産業も外出自粛などの影響を大きく受ける。外食産業には昨秋の台風19号で工場が被災した幸楽苑HD、「いきなり!ステーキ」の自店舗同士の競合で収益が悪化したペッパーフードサービスなど、コロナショック以前から経営が危ぶまれる企業が存在する。これらの企業の苦境はさらに深刻なものになるだろう。
グラフにあるように、消費支出は、昨年10月の消費税率引き上げ後、増税前の駆け込み需要の反動減で前年同月比マイナスが続いている。新型コロナウイルスを巡る混乱で、反動減からの回復どころかさらなる落ち込みとなる公算は大きい。
政府は2月下旬、感染拡大のスピード抑制のため「この1~2週間が瀬戸際」と訴えてきた。だが、3月以降も感染拡大が続き、感染予防のため外出を控えるムードや、景気悪化による消費の落ち込みが大きくなれば、経営リスクにさらされる企業はさらに増える。小売業、外食産業以外の企業の業績も悪化に向かうだろう。