変わるためには
転職が一番

 新しい職場ではこれまでの時間配分を全て変えなくてはならない。住む家が変わらなくても行く会社が変われば、行く場所も変わる。通勤途中で見えるものや風景が変わる。見るもの聞くものはすべて新しくなる。そして、付き合う人も大幅に変わる。

 できれば冒頭のような病気や年金話とは無縁の若い会社、批判するよりも新しい挑戦が当たり前に行われる会社、先端技術や時代の潮流に乗っている会社、社会の動きに会社がいや応なくのみ込まれるようなグローバルな視点を持った会社、趣味の話を業務時間にやりたくてもやれないような忙しい会社を選ぶのがよいだろう。

 こういった会社は当然人気があり、また先方の求める技術やスキルのレベルが高いため、入社のハードルは高いかもしれない。しかし実は、新しい会社においては、大企業や堅実な企業が培ってきたノウハウが必要とされていることがある。というのも、こういった会社には、安定した企業では当たり前の各種の組織運営ノウハウ(個人ごとの能力把握や育成方針づくり、管理会計の仕組み、営業先との付き合いの多重化など)を吸収したいという意識があるからだ。給与額や肩書にあまりこだわらず、郷に入っては郷に従えの精神さえあれば、大企業で培われたあなたが持つスキルで、どうにかそうした会社に潜り込むことも難しくはない。

 あるいはもう少し楽な選択肢として、先ほどのような元気な会社との「取引を開始する」という方法もある。これまでの安定したいつもの供給業者や営業先を大幅に変更するのである。

 そうすれば、仕事時間の配分を変え、付き合う人も変えることができる。転職ほどではなくても新しい元気な会社の人たちと普段から行き来することができれば、良い影響を受けることができる。あるいは副業でこういう会社の人と仕事をするということも考えられる。

 3つめの選択肢としては、こういった若い会社や最先端の人々の集まる場所に出かけ、何かを一緒に行うことである。イベントに出て、いろいろなトレーニングプログラムに参加する、そこにいる人たちと話をする、勉強会に参加してみるといった形態がある。かなりの刺激は得られる。ただしこれらの活動は、時間が限定されており、相互作用はあっても、所詮はままごとなので、あなた自身を大きく変えるというところまでにはいかないだろう。

 そんなことで、会社にいる暇なおじさんの姿が自分の将来に重なったのならば、絶対に転職をお勧めする。時間の止まった会社の針を動かそうとするエネルギーがあるなら、そのエネルギーをすでに動いているところで使う方が、あなたにとっても社会にとってもよほど成果が出る。多少の給与の低下や会社の格が下がることを気にして、今のまま居続けるほうこそリスクが高い。

 感染症対策や働き方改革などを見ても、短期的には伝統的な大企業のほうが処遇の上では圧倒的に良さそうに見える。しかし、ほんの5年先、10年先を見れば、もう“使命を終えた会社”の“暇なおじさん”(将来のあなたの姿)にまともな仕事があるとは思えないのである。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)