南海トラフ地震前は内陸地震が多発!
“断層がない”場所にも要注意

──南海トラフ地震のほかに発生が懸念される場所はありますか?

 実はこれまでの歴史から、南海トラフ地震が発生する前の数十年間と発生後の数年は内陸での被害地震が明らかに増えることが分かっています。先ほども申し上げた、フィリピン海プレートの沈み込みによる力は内陸の断層にも影響を及ぼしており、弱面の断層に力が集中すると、断層面に沿って岩盤がずれ動いて地震が発生します。

 前回の南海トラフ地震であり、約1200人が亡くなった昭和東南海地震(1944年)の前には、1943年に内陸地震として鳥取地震が起き、1000人以上の方が亡くなられました。そして、東南海地震の1カ月後に起きた内陸地震である1945年1月の三河地震では2300人が犠牲に。同じく南海トラフ地震である昭和南海地震(1946年)の2年後の1948年には、なんと3700人超の死者を出した内陸型の福井地震も起きています。つまり、南海トラフ地震本体以上に多くの方が内陸地震で犠牲になっているのです。

 現代に戻ってみてみると、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)から一昨年6月の大阪府北部地震を含め、多数の内陸地震が起きています。つまり、南海トラフ地震本体はもちろんのこと、前後に起こる内陸地震にも注意が必要です。

 ではどのエリアで内陸地震が発生するかというと、現在、さまざまな取り組みをおこなっていますが、その予測はいまだに難しい課題です。というのも、20世紀以降に内陸地震を起こした震源断層を分類してみると、存在を把握できない震源断層が2割程度あり、さらに活動履歴から長期的に評価が可能な断層は全体の半数以下に限られるからです。

 地震を引き起こす地下深くの震源断層は、地下の浅い場所では現れ方が異なります。ここでは「活断層」「伏在活断層」「潜在断層」の3つに分類します。活断層は通常M6.8以上の地震では地表に地震断層が出現しており、事前に把握することも可能です。伏在活断層は厚い堆積層、溶岩など火山噴出物によって覆われ、地表には直接断層がありません。こうした断層については、地震前には見逃されている場合でも、適切な調査を行えば地下の断層の存在が分かります。そして3つ目の「潜在断層」としたものは、地質構造などから震源断層の存在を把握できていないものです。

 20世紀以降に内陸地震を起こした断層を見ると、活断層37%、伏在活断層40%、潜在断層23%となっています。すなわち、「断層がない」といわれている場所であっても、地下に震源断層が潜んでいる可能性も否定できませんから、日本全国の多くの場所で内陸地震の発生を懸念する必要があります。