原油価格急落のインパクト
3月6日、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国で作る「OPECプラス」の協調減産を巡る会合で、OPECの150万バレルの追加減産要求にロシアが反発、交渉が決裂して原油価格は急落した。
ロシアの予算レートがBrent原油で42ドル程度であり、OPECプラス開催前の価格水準でも問題なく、かつ、さらなる減産は収入減になるとロシア国内の原油生産者から強い反発があったためだ。
しかし、この結果を不服と考えたサウジアラビア(おそらくムハンマド皇太子)が強硬手段に出る。公式販売価格(OSP)をサウジアラビアの主要原油であるアラブライトベースで前月比6ドルも一気に引き下げたのだ。
通常、OSPは市中での販売価格を参考に決定されるため、2ドル程度の引き下げはあるのでは、とみられていたがそれをはるかに上回る水準となった。原油価格の下落が始まると、歳入確保のために産油国が増産に走り、さらに価格を押し下げることになる。
サウジアラビアは4月からの生産を日量1230万バレルに引き上げることを早々に決定している。その裏の意図として、財政状況の悪化には目をつぶり、他生産者をつぶしにかかっているともいえ、市場は大きく混乱することになるだろう。Brentで20ドル台まで下落することも想定しなければならない。
とはいえ、ここまで急落すると、いくらコロナウイルスの感染拡大防止のためにヒトやモノの移動を制限して需要が強制的に減少しているといっても、さすがに需要が喚起されるだろう。また、価格下落に耐えられなくなったロシアが協調減産に応じる可能性もある。加えて価格の長期低迷はサウジアラビアも財政的に許容できないことから、この低価格水準は長期化しない、というのがメーンシナリオだ。