退職金運用の間違い(2)
定年時に住宅ローンが残っている。
退職金を投資で増やしてから、繰り上げ返済するつもりと言った人

 これはセミナー会場での質問。

 定年時の住宅ローンの残債が退職金の額と同じくらいある。退職金で住宅ローンをすべて繰り上げ返済すると、老後資金に残らなくなるから、まずは投資信託を買い、増やしてから繰り上げ返済すると、老後資金を作ることができると思うが、どうだろうか。

→借金は「確実なもの」、運用は「不確実なもの」。不確実なもので借金返済計画を立ててはいけないとアドバイス

 そんな人いるの?と読者の方は思うかもしれないが、たまにいる。このように考えている人に共通するのは、投資が未経験ということ。投資をしたことがある人なら、投資は思った通りにならないことは実感としているから、「増やしてからローン返済」など恐ろしいことは考えない。

 退職金で住宅ローンの残債をすべて返済すると、老後資金が確保できずに不安、というのは確かにおっしゃる通り。ならば、投資で増やしてからと考えずに、60歳以降の支出の見直しなど生活設計を立てるのが先決。一部を繰り上げ返済し、返済額を減らしたり、完済期間を早めたりする方法もあるとアドバイスした。

 もし、この質問者が退職金の全額を投資につぎ込んでいたとすると、今回のコロナショックで投資資産は大きく目減りする事態になっているだろう。経済が回復すれば、いつかはもとの額に戻るだろうが、その時期はいつなのかわからない。1年後かもしれないし、5年以上先かもしれない。

 定年退職後は再雇用制度で働いたとしても「収入ダウンの崖」に落ちるため、減った収入の中から住宅ローンの返済を続けていると、家計の収支は大きく赤字になることが多い。

 つまり、投資した金額まで戻るのを待っている間が長くなるほど、赤字が累積されていき、退職金以外の預貯金を取り崩すことになるのだ。

 住宅ローンに限ったことではないが、「退職金はまず投資で増やしてから使い道を考える」のは論外であることを覚えておこう。