「よくがんばったね」と声をかける

 では、親はどうすべきなのだろう? その答えはじつにシンプルであることがわかっている。

 頭の出来がいいと褒めるのではなく、「よくがんばった」ことを褒めるべきなのだ。テストの結果がよかったときに、「おまえを誇りに思うよ。ほんとうに頭がいいわね」と、言ってはならない。

 そんなふうに言うと、子どもの生まれつきの特徴、つまり「頭の出来」という固定した才能を褒めることになる。すると、子どもに硬直した考え方をする「こちこちマインドセット」を植えつけてしまう。親は「あなたを誇りに思うわ。よくがんばって勉強したわね」と、言うべきなのだ。こうすれば、みずからの意志でやり抜いた努力を褒めることができる。すると、子どもに「しなやかマインドセット」を植えつけられるというわけだ。

 30年以上にわたる研究により、「こちこちマインドセット」より「しなやかマインドセット」を重視する家庭で育った子どものほうが、つねに成績がいいことが判明している。それは、おとなになっても変わらない。

 学校でも研究室でも、「しなやかマインドセット」をもつ学生のほうが、「こちこちマインドセット」をもつ学生よりも、むずかしい課題に時間をかけて取り組んでいた。そして、そうした課題を解決できた例も多かった。「よくがんばっているね」と努力を褒められていた学生は、「頭がいい」と褒められていた学生よりも、数学の難問を解ける確率が50%から60%も高かった。

「しなやかマインドセット」の持ち主は、「ミスは努力が足りなかったから起こるのであって、自分に能力が足りないせいではない」と考える。認知機能を駆使して努力すれば、ミスを修正できることがわかっているのだ。

 子どもの努力を褒めていれば、子どもはもって生まれた知能がどれほどのものであれ、それを最大限に発揮できるようになる。

(本原稿は『100万人が信頼した脳科学者の絶対に賢い子になる子育てバイブル』ジョン・メディナ著、栗木さつき訳の抜粋です)