日経平均株価がバブル後最安値を更新する中、またぞろ株価対策を巡る議論が活発化してきた。米国株の下落に引きずられて、日本の株価は大きく下げている。日本の経済指標も現実に悪くなってきた。目先希望が持てる材料が乏しい。というわけで、ここで政府に株価対策を打って欲しいという声が財界を中心に増えている。

 まだはっきりと何をするか決まったわけではないが、新聞報道によると、政府も対策には前向きのようだ。財務・金融・経済財政担当相を兼務する与謝野馨大臣は3月4日の参院財政金融委員会で「株価が急落すると、金融機関や生保などの経営に重大な影響を与え、一般企業の経営を何らかのかたちで圧迫する。それによって雇用が不安定化する」と発言している。

 ただ、率直に言って、現在メディアから伝わってくる政府・与党の株価対策は、かなり筋が悪い。4日の財金委員会で可決された銀行等保有株式取得機構による買い取り再開を筆頭に、需給対策型の、政府のお金で株を買う対策が並ぶ。しかも、新聞報道を読むと、銀行及び持ち合い会社の株式を買い取るだけでは株価対策として不十分だとして、ETF(上場投資信託)を購入対象に加える案も議論されている。さらに、そのETFでも効果は限定的(ETFは時価総額で2兆円程度しかない)であるとして、いっそのこと先物を買えるようにしたらいいという意見もある。また、かつて行われたような公的年金資金による株式購入を期待する向きもある。

 そもそも株価対策については、「効果の有無」と「対策の善悪」の二つを考える必要があるが、そのいずれの尺度においても、正しい議論がなされているとは思えない。

 先ず、効果の有無でいえば、株価の需給に働きかける対策は、はっきり言って、効果が続かない。株が一時的にマーケットで買われたり、売りが止まったりしたとしても、その後結局買いの手が止まると、また下がってくるからだ。たとえば、昔の経験で言うと、春先に公的年金資金の配分の頃、一時的に株価が一割程度上昇したり、下げ渋ったりするが、その後だんだん期待が剥げ落ちて、5月から6月ぐらいになると、買いが続かなくなって下落する展開が90年代には何度もあった。公的年金で一生懸命買っている間に、外国人の投資家がそこを狙って売るというような展開も多かった。需給に働きかける対策は、後述するような株式の価値に働きかける対策とは違って、一時的なものでしかないのだ。