百戦錬磨のエースたち
――刀のエースを紹介してください。
森岡 全員がエースです。一人一人がその役割における刀のエースなのです。凄い人ばかり30名以上も集まってくれました。その中から幾人かご紹介します。
まずは刀のCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の森本咲子さん。P&Gでは『SK-Ⅱ』を大きくし、USJでは消費者体験づくりからブランディングをリードした世界屈指の消費者マーケターです。マーケターというのは、消費者の顔色を見た瞬間に、その本質を見抜くのが本当の力なんです。そこは、IQ(知能指数)とEQ(こころの知能指数)の両方揃ってないとダメなんですが、20代の私が特にEQ面で苦しんでいたときに、ああいうふうになりたいとP&Gで尊敬していた1年上の先輩が森本咲子さんなんですよ。ブランドの意思決定、設計図をつくるために必要な消費者の深層心理を洞察する能力。抜群にここが凄いのが、森本さんです。この能力にかけて私が知る限り世界最強です。だから、私はUSJに行った後に、まだP&Gで大活躍していた森本さんにストーカーのように電話をかけまくって来てもらいました。「関西唯一無二の経済装置を救う大戦略を実現したい、何としても助けてください!」と。そして、USJと刀で更にとてつもない経験を積んだ彼女は、マーケターとしてとんでもない“モンスター”になっています。でも人柄は昔のまま変わらずに柔らかく、大変な人望もある方です。
今西聖貴さんは、私の盟友です。何十年にもわたって、彼と繰り返してきた実戦と理論を縦横する自由かつ緊張感のある議論が、私の戦略思考を研ぎ澄ます最高の砥石であったと確信しています。彼は私よりも19歳も年上で、私が社会人になるずっと前から、米国P&G本社で長年に渡って需要予測モデルの開発をリードしてきた、P&Gのまさに世界最高頭脳。その独自のノウハウをP&Gアメリカ本社時代の私に、惜しみなくいろいろ教えてくれました。数学を駆使した分析については私も得意だったのですが、彼の知見に触れて大変感動しました。この領域における知見において今西さんの右に出る者は、私は地球上でまだ知りません。刀のインテリジェンス部門のトップで、CIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)です。刀の戦略と判断を正解に導くための忖度ない深い視点を常に供給してくれます。
あと、刀は、戦略だけの会社ではありません。お家芸のエンターテイメントを成功させるためには、もの凄いクリエイティブチームが欠かせません。それを社内に構築しています。そしてクリエイティブもチームとして機能するという理解は大切です。アイデアはもちろん大切ですが、アイデアを実現可能な予算とスケジュールに落とし込むところにも、そのプランを建築可能になるように設計し実現していくところにも、凄いプロたちがいてくれます。一人一人が私の自慢の仲間たちです。今、沖縄テーマパーク、横浜IR、ネスタリゾート神戸、西武園ゆうえんちなどを、彼/彼女らが必死に才能を輝かせています。
刀のクリエイティブチームで付き合いが長いのは、クリエイティブディレクターの津野庄一郎さんや、クリエイティブプロデューサーの土居聡さんです。ライブ・エンターテイメントをどう構想するかということをやらせたら、日本の中で最強なのは、この2人じゃないでしょうか。
どうしてそう言い切れるかというと、日本の中で大規模な予算を使って、あれだけの数のエンターテイメントをゼロから考えるという責任を担ってやれる権限があるパークが、USJしかなかったからです。ものすごい数、ものすごい予算を使って、ものすごい経験を積んできました。その成功確率は胸を張れるほど非常に高いわけですよ。
土居さんと津野さんの名コンビは、大成功したUSJのハロウィーン・ホラーナイトのクリエイティブを構想したり、様々な日本のコンテンツを使った画期的なアトラクションを制作したり、様々なライブイベントを仕掛けてきました。
クリエイティブ製作から実際の運営まで一気通貫で、これだけ人を動かしてやった経験がある日本人が、まずいません。
星野リゾートから来てくれた佐藤大介さん、彼もね、やはり人をポジティブに巻き込む力、外交能力が、もう天才です。私は人と会うと5秒で嫌われるときがあるのですが、彼は顔を見た瞬間に好かれます。会って話すと、ものすごくポジティブなオーラに包まれるんですよ。様々な事情の中で沖縄のプロジェクトにご理解いただくために、現地で八面六臂の大活躍をしてくれています。
行政方面の方々の心をつかむのもうまいし、対人能力は最強。極めて目的志向で、戦略的にその能力を発揮できる人なんです。「雲海テラス」などでV字回復したトマムリゾートの責任者をしていたことでも彼は知られていますが、かつて彼の下で働いてた人たちの話を聞くと、やっぱり大介さんのために頑張ろうって、みんなに思わせる力が半端なかったと。彼の天性のリーダーシップは、「人」と「地方創生」への情熱でいつも燃え上がっています。
特筆したいのは、刀の中の「できすぎ君」、加藤健史さんです。沖縄のテーマパークプロジェクトをまとめるジャパンエンターテイメントの社長をやっています。彼はたぶん、ビジネスマンとしての潜在能力を全部採点すると、総合点はもしかして刀の中で一番高いかもしれない。全部の能力が極めて高いし、足まで長い(笑)。あれで性格が悪かったらいいんだけど、性格もすごいいい(笑)。飲み屋で酒を飲んでも、ネガティブなことや人の悪口などは一切言わないんです。
彼は、インダストリアルエンジニアリングと運営の専門家です。そこの道路をどれだけの大きさにしたら、1日の車の処理能力がどこまで上がるか、下がるかということを計算で弾き出すことができます。他にも、スパイダーマンというアトラクションをいま30人で運営しているなら、それを10人減らして20人で運営するためには、どうすればいいか。ゲスト満足度を下げないためには、どう配置して、1人当たりのタスクをどう定義して、どう組み合わせればよいを考えるのが、彼のもともとの専門です。
それに加えて、ファイナンスもずっとやっていました。企業価値の算定とか、PLの戦略的マネジメント、アカウンティング、事業計画、そういうこともできる。さらに私がきっちりマーケティングを仕込んだ。もう腹が立つぐらいなんでもできる(笑)。ニコニコしながら全部吸収していくんですよ。
阿部一貴さんは、チームを率いて最高のパフォーマンスを発揮させる刀の誇るマーケティング司令官です。元々P&Gにいて、我々と同じような挑戦心を持っていた。ビールの会社にいたこともあって、そこで苦労して営業組織に入り込んで実績を出した経験もある。それからフェイスブックでバリバリ頑張ってたいたのですが、刀の旗揚げを知って馳せ参じてくれました。刀の中でも、マーケティングのみならず、営業組織をどう束ねてドライブするかという領域で随一の知見を持っています。
彼はEQにも優れ、私とは違うスタイルですが、リーダーシップがとても強い人。周りの人をヤル気にさせてその力を引き出し、前向きに束ねることができる人です。人柄が義理堅く誠実で、みんなが彼を信頼し彼の下に団結していく。見た目はゴツいのですが、実は内面は優しく人の気持ちがよくわかり、少し心配性なところも先読みが利く知性ゆえの素晴らしい特徴です。
丸亀製麺のプロジェクトがいま安定してるのは、阿部さんが責任者であるプロジェクトディレクターをやってくれているからです。これからのキャリアの中で多くの人を巻き込んで、いつか日本のためにとてつもない仕事をする人だと私は確信しています。
田村考さんについても語らせてください。彼はデジタル領域において刀随一の知見を持つ日本屈指のデジタルマーケターであり、マスコミュニケーションにも至高のノウハウを持つ、まさに文字通りの万能マーケターです。USJで私は彼と出会い、彼の知見と才能に惚れ込み、社運を懸けたハリー・ポッタープロジェクトでクロスマーケティングの陣頭指揮を任せたのも田村さんでした。彼は少ない予算で見事に全国認知100%を達成したMVPです。
田村さんは突出した思考力の人で、その頭脳が同時に処理できる情報量は尋常ではありません。問題に直面しても、その怜悧な思考は冷静に解決策を求めて回転し続け、慌てたり感情的起伏で判断を誤ることがない。そして人を育て組織を作る情熱と能力も非常に高い。刀で多くの経験を積み、元々高い潜在能力を開花させ、トップマネジメントの視点でその辣腕を振るっています。
解決策を見つけること自体が困難なプロジェクト、大きな組織変革が必要なプロジェクト、そんなハードルが高い戦局があったとき、私が最も信頼してそのリードを頼めるのが田村さんです。