これからの
実体経済の悪化懸念

 この状況下、世界各国の実体経済(需要と供給)が悪化することは避けられない。今後、所得・雇用環境を中心に、金融市場にもかなりの影響が及ぶだろう。

 4月7日、日本政府は7都府県を対象に5月6日までの緊急事態宣言を出した。これによって、日本経済にはかなりの下押し圧力がかかる。5月のゴールデンウイークはわが国の小売、飲食、航空・鉄道業界などにとって収益を獲得する重要な時期だ。

 例年、連休中に外出しテーマパークや映画館などを訪れる人は多く、海外に観光に出掛ける人も増えるものだった。ところが、それが難しくなったばかりか、海外からの観光客などインバウンド需要も消滅しつつある。緊急事態宣言によって人の移動が大きく制限されることが経済に与える影響は甚大だ。

 世界経済を支えてきた米国においては、人の動線遮断により失業者の増加が鮮明だ。すでに3月後半の2週間で米国の失業者は約1000万人増加した。この状況が続けば、失業率が20~30%台に達する最悪の展開も排除できない。

 企業業績に関しても、年前半、相当の落ち込みを覚悟しなければならない。米国ではエネルギー業界を中心に設備投資が削減されている。米国では企業の倒産件数も増えている。4~6月期まで日米欧の企業業績は相当厳しい。不良債権処理が遅れているユーロ圏では、企業業績の悪化から信用リスクが高まり、金融システムへの不安が高まりやすい。

 また、世界経済の成長をけん引してきたIT先端分野でも、スマートフォンなどの販売の減少に加え、感染拡大がデータセンターや物流拠点の運営に支障を生じさせている。アマゾンが自社の配送サービスを一時停止すると報じられるなど、世界全体で需給が大きく崩れている。

 経済が円滑に運営され、それによって主要国のGDP成長率の上昇が実現されるには、人が自由に外出できる環境が欠かせない。各国が財政出動を用いて景気対策を打っているが、外出できなければ有効需要には結びつかない。いつまで感染が続くか、その影響がどの程度あるかによって、さらに長い期間、より強く外出が制限される可能性もある。

今後の世界経済の混乱と
メガトレンドの変化

 年前半、世界各国で実体経済の落ち込みは避けられない。2020年の世界経済の成長率がマイナスに陥ることも不可避の状況だ。今後の展開次第で、世界は第2次世界大戦後に経験したことがないような実体経済と金融市場の混乱に直面する可能性がある。

 米国の大手投資銀行の経済予想を見ると、年後半、米国のGDP成長率はプラス圏に浮上し“V字回復”が進むとの予想が多い。その背景には、年前半に感染が収束し、その後、世界全体で人の移動が再開するとともに経済活動が巡航速度に回復するとの仮定がある。