その一律の基準では、貸出先の実態バランスシートに基づいた債務者区分と、過去の貸し倒れ実績が重視され、また担保や保証でカバーされている貸出債権は引き当てる必要がないとされていた。金融庁も、こうした形式重視の検査をしていたため、銀行は実態に即した分類や引き当てよりも担保や保証に過度に依存するようになり、次第に目利きの力を失っていったのだ。金融庁は近年、貸出先のビジネスをもっと動態的に捉えて支援する「事業性評価融資」を推進している。そして、債務者区分や引き当ての実務においては、それぞれの銀行の経営方針を重視する方向にある。

 そうであれば、現在のコロナ・ショックに際しても、銀行は数カ月から1年程度の影響であれば、貸出先の赤字や財務内容の悪化にかかわらず融資を継続するのはもちろん、日ごろの事業性評価に基づいて融資を増やすことは可能なはずだ。

 そして、次の決算において貸出先が赤字や債務超過に陥ったとしても、その銀行の経営方針として「新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した企業は支える」ということが決められていれば、債務者区分を引き下げて不良債権に分類し、引当金を積み増す必要はないと考えることができる。金融庁がやるべきことは、単純にそのことを各銀行と改めて確認するだけである。これなら明日にでもできるのではないか。

 なお、この機会に筆者が日ごろから気になっていることを述べておきたい。

 それは、政治家が何かというと「中小企業」を支援の対象にしがちなことだ。米国などと違い、日本では「中小企業」とは、中小企業基本法において業種別に定められた形式的な基準で中小企業とされた企業のことだ。しかし、その基準は、業種の分類、資本金の額、従業員の数など、極めて表面的で時代遅れでさえあるものがほとんどなのだ(例えば、今ではどんな大きな企業でも資本金は1円でもいい)。

 だから、実態は中小企業なのに大企業扱いされている中堅企業が多数あるのが実情だ。例えば資本市場で直接資金調達ができない企業を「中堅・中小企業」として差別なく支援する方が理にかなっている。

雇用の確保
参考になる米国政府の支援策

 ここまでは簡単な話であり、金融庁だけで可能な施策だ。しかし、そこから先は大きな政治的な意思決定が必要となる。まず雇用の確保のために必要な特例措置だ。

 ここで参考にしたいのが米国政府の支援策だ。

 米政府はいち早く2兆ドル(約215兆円)の景気対策を打ち出したが、その中に、3490億ドル(約38兆円)の中小企業向け融資枠がある。この3490億ドルは、中小企業局(SBA)を通じて銀行が中小企業に融資する。

 融資には政府保証が付いており、雇用を維持して従業員に給与を払うなど、一定の条件を満たせば、借入後8週間の費用(人件費・健康保険・家賃・水道光熱費・既存の金利支払い)は元本返済から免除され、残債については金利1%、2年となる。融資額の上限は1社当たり1000万ドルまたは、月給合計額の2.5倍で、従業員の給与支払いに充てることになる。