今後、世界経済が未曽有の景気後退に陥る可能性は軽視できない。4月中旬の時点で米国を中心に株価は反発しているが、そうした動きを本当の意味で信用できない。世界経済が大きな変化の局面を迎えていることは冷静に考える必要がある。

世界経済の成長を支えた
グローバル化とその反動

 第2次世界大戦後の世界経済の安定を支えた大きな要因の一つがグローバル化だ。米国は政治、安全保障の覇権を強め、冷戦後の世界経済の基盤を整備した。それが、旧社会主義国や新興国の経済成長を支えた。米国独り勝ちの期間がかなり長く続いたといえる。過去数年間の世界経済を振り返っても、戦後最長の景気回復を達成した米国経済に支えられた側面は大きい。

 米国を基軸とするグローバル化の進行によって、先進国の中間層は、遠心分離機にかけられたかのように、一握りの富裕層と、その他多数の低所得層に振り分けられた。これが、経済格差の拡大、環境問題、米国の医療問題など、さまざまな問題を深刻化させた。しかし、リーマンショックまでは、そうしたグローバル化の負の側面への関心が高まることはあっても、それが世界全体を揺さぶるまでには至らなかった。

 リーマンショック後、徐々に、米国主導によるグローバル化への反発が表面化し始めた。言い換えれば、米国の覇権は弱まり始め、中国の存在感が高まり始めた。さらに、2016年11月の米大統領選挙では、独断専行型の考えを持つトランプ大統領が誕生した。それは米国でさえ、グローバル化の無理に耐えられなくなりつつあることを示す象徴的な出来事だった。

 2018年3月以降、トランプ大統領は対中貿易赤字の削減やIT分野での覇権を目指し、中国に制裁関税をかけ始めた。世界の工場としての地位を高めてきた中国からベトナムやインドなどに生産拠点が移管され、世界各国が整備してきた供給網が寸断された。それは、グローバル化の反動というべき動きの一つだったといえる。

 一方、中国は米国を批判すると同時に、東南アジアを中心とする新興国、さらには中国の需要に依存してきた欧州各国との連携を目指した。2019年3月にはイタリアがG7で初めて中国の「一帯一路」に参加すると表明した。

 これは、主要先進国の利害の多極化を示す出来事の一つだ。視点を変えれば、中国は米国が主導してきたグローバル化とは異なる価値観を各国に提示したり、トランプ大統領の言動を批判したりすることで発言力を高めようとしている。