赤字上場する企業は年々増加傾向にあります。先行投資のために赤字が発生することに対しては、投資家の間でも少しずつ理解が広がっているようにも見えますが、その一方でスタートアップ経営者には、現状の赤字の背景・理由、黒字化の見通し等の説明が求められます。今回は、赤字の上場スタートアップは市場に対してどのような説明を行う必要があるのかについて考えます。

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赤字上場に対する投資家の態度の変遷

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):近年、マザーズでは赤字上場する会社が如実に増えてきました。特に、先行投資型の企業に赤字上場が多く見受けられますが、今回はそうした企業に求められるIR上の投資家への説明について考えてみたいと思います。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):2019年は赤字上場した企業の数が急増しています。従来は赤字上場する会社は年間に数件だったのが、昨年度はマザーズに上場した64社の内、25%にあたる16社が赤字上場でした。

海外では赤字上場は珍しいことではありませんでしたが、近年グローバルな投資家は赤字上場を嫌う傾向にあります。ですが、グローバルトレンドからの遅効性があるためか、日本では昨年度、赤字上場する会社が急増したというのは興味深い事象です。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):加えて、売上高に対して赤字が大きい企業が増えているのも特徴的です。SaaSスタートアップのように、Jカーブを描いて成長する産業が、アメリカよりも遅れて増えてきているからかもしれません。

朝倉:国内では、Jカーブ成長型のスタートアップがアメリカよりも遅れて現れ、結果、赤字上場の傾向も遅れて現れているということですかね。

村上:実際に、赤字上場する会社の多くがSaaS企業です。

小林:ここ最近のスタートアップブーム以降、赤字上場が最初に話題になったのは、2014年のクラウドワークスの上場でしょうか。2018年に上場したメルカリもユニコーンの赤字上場として象徴的な事例でしょう。

朝倉:メルカリは、上場時から一貫して、US市場への先行投資のために当面は黒字化しないことを明言していました。上場時にわざわざ、日経新聞に一面広告を出したくらいですからね。そういった意思を明確に伝えてはいても、決算の度に赤字について厳しく追求されています。

こうした状況をふまえて、どういった開示のしかたであれば、より投資家からの納得感を得ることができるのかについて考えてみましょう。

小林:仮に上場前の黒字転換を約束していて、その約束が守られなかったのであれば、厳しく追及されるのは仕方ありません。一方で、メルカリの場合、当初から黒字化は当面先だと明示していました。
だとすると、単に黒字か否かとは別のところに投資家の不満があるということなのでしょうね。

村上:理由としてひとつ挙げられるのは、会社側と投資家の時間軸のズレの問題だと思います。
メルカリの場合、直近では国内市場で利益を上げている一方で、海外への先行投資では大きな赤字が続いている。それを投資家に説明するときに、投資家が求める投資回収の時間軸と、会社側が想定している時間軸の間にズレが生じているのではないでしょうか。

これがもし、海外への先行投資が来年には黒字化して連結決算が黒字化するという見通しが立っているのであれば、おそらくここまでの問題にはならないはずです。投資家から見れば、海外市場での黒字化の見通しが立たないというところが、メルカリが苦労しているポイントなのではないかと思います。