この発動を受けて米連邦食品医薬品局(FDA)は、2日後に人工呼吸器の製造に関する一部規制を緩和し、性能が維持できる範囲での素材および部品仕様の変更を柔軟に行えるようにした。また、GMは医療機器メーカーのヴェンテック・ライフ・システムズ(VLS)と契約を結び、インディアナ州にあるGMの工場で人工呼吸器の量産に乗り出した。同時にGMはUAW(全米自動車労組)に協力を求め、過去に解雇した約1000人の元従業員を再雇用した。

 人工呼吸器の製造経験のない自動車および自動車部品の工場が、手作業がほとんどの人工呼吸器生産を短期間のうちに量産、それを軌道に乗せることは難しい。当初、GMとVLSは4月末までに4万台を生産する計画だったが、実際には6000~7000台の生産にとどまる見通し。また、政府への納入価格については「企業が求める値段と政府の予算とが折り合わない」といわれたが、米政府はGMに対し5億ドル程度(約540億円)を前払いしたという現地報道もある。

テスラ、フォード、トヨタ、フィアット…
産業界も交えた総力戦に

 ユニークなのは電気自動車専業メーカーのテスラ・モーターズの取り組みだ。同社はDPAの命令を受けていないが、主力商品のモデル3の車両制御コンピュータ用筐体(きょうたい)やコクピットに使っている液晶ディスプレイ、空調システム用の配管やセンサー類を使って人工呼吸器を自社開発している。性能が確認されればただちに量産に移行し、ニューヨーク市の病院に寄贈する予定だという。

 これ以外にも、フォードは電気大手のGE(ゼネラル・エレクトリック)と共同で人工呼吸器を生産するほか、トヨタも人工呼吸器生産で米国の医療機器メーカー2社と提携した。フィアット傘下の旧クライスラーも協力する。フィアットはイタリアで人工呼吸器を生産する計画も進めている。COVID-19との戦いは産業界も交えた総力戦になってきた。

フォードは3月末「今後100日間で人工呼吸器を5万台生産する」計画を明らかにした Photo:FORD 拡大画像表示

 実は、米国の自動車産業界は第2次大戦で兵器の量産に大きく貢献した過去がある。GMはグラマン設計の雷撃機アヴェンジャー、戦闘機F6Fヘルキャットなど小型海軍機、フォードはコンソリデーテッド設計の大型爆撃機Bー24など、クライスラーはM4シャーマン戦車などを持ち前の単一商品大量生産システムにより流れ作業で量産した。また、タイヤメーカーのグッドイヤーも海軍機F4Uコルセアの生産を請け負った。