「家族中心」から「本人第一」へ
認知症ケアの主役が変わった
認知症への関心が高まり、今では、認知症の本人の立場になって考え、ケアに臨む方向が広がりつつある。介護の現場で、「本人第一」「本人本位」という言葉をよく聞くようになった。認知症当事者たちの団体、一般社団法人「日本認知症ワーキンググループ」(JDWG)が発足したのは2014年10月。その後「本人」を強調するために、「日本認知症本人ワーキンググループ」と、「本人」を挿入して改称したほどだ。
同グループは18年11月に、「認知症とともに生きる希望宣言」を発表した。5カ条で構成され、「認知症になったらおしまいではなく、前を向いて生きていきます」「社会の一員として楽しみながらチャレンジしていきます」「人として当たり前のことが守られているか、私たち本人が確かめ、提案や活動を一緒にしていきます」など、当事者としての思いを社会に訴えた。画期的なことだ。
これまでの認知症に関わる市民活動は、認知症の人の家族が中心になり、どのように医療や介護の手助けを得たらよいかなどが話し合われてきた。残念ながら、認知症の本人の声に耳を傾けることはあまりなかった。
そこへ認知症の当事者たちが立ち上がった。自らの思いを直接アピールする。活動の主役が入れ替わった。
世界で初めて、認知症の当事者がグループを作ったのはイギリス北部、スコットランド。グラスゴーで金融機関に勤務していた中年男性のジェームズ・マキロップさんを中心に、アルツハイマー協会が協力し「スコットランド認知症ワーキンググループ」(SDWG)を2002年に設立した。以降、世界各国で当事者運動が起きはじめ、12年後に日本でも発足した。
介護保険制度とは別に、国が認知症施策をまとめたのが「オレンジプラン」であり、それが「新オレンジプラン」に変わり、昨年6月に閣議決定した「認知症施策推進大綱」に引き継がれた。