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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

ITは雇用を生まずに所得格差だけを広げるのか?
米国の失業率が回復しない本当の理由

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第59回】 2012年8月23日
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 進化を後押ししているのはムーアの法則である。ムーアの法則は、コンピュータの処理能力が18ヵ月で2倍になり価格は半減する予測を指す。コンピュータの処理能力以上に重要なのはアルゴリズム(コンピュータに仕事をさせるソフトウェア)の発達である。あるコンピュータ・サイエンティストが分析したところ、進化の大部分は、処理能力の向上よりは、アルゴリズムの発達に依存するところが大きく、その倍率は処理能力の数十倍に相当するという。

 ではコンピュータが発達していくと、人間のどの部分が代替されていくのだろうか。現時点のコンピュータはパターンを認識してマッチングさせていくのは得意であるが、問題解決能力、 感性で判断する部分、人間の持つモラル、創造力といった面では弱い。ただ、今後アルゴリズムの発達によって、人間固有の能力を更に侵食していく可能性がある。

 ではITの発達で何が代替されたのか。いまでは多くの人が銀行に行かずにATMで現金を引き出しているし、空港では搭乗者が自分で発券機を操作して発券できるようになった。銀行のテラー(窓口担当者)と空港の搭乗券発券職員がITに代替されたのである。

 本来、コンピュータの発達は、労働者のスキルの変更・向上と、それを受け入れる企業側での制度の変更と同時並行的に発達すべきものである。しかしながら、ここ10年間にITだけが急速に発達したために、企業も個人もその変化について行けていないところに問題がある。多くの労働者が職につけないのも、そこにひとつの原因があるとする。

 ではコンピュータは労働市場にどのような影響を与えたのだろうか。両教授は、三つの要素が絡んでいるとする。それはスキルの差、スーパースターと一般人の格差、資本と労働の分配率の変化である。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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