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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

ITは雇用を生まずに所得格差だけを広げるのか?
米国の失業率が回復しない本当の理由

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第59回】 2012年8月23日
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1.スキルの差

 工場のオートメーションで言えば、単純作業をする人の需要が減少し、機械を動かすプログラムを開発する人や工程を管理する人の需要は上昇した。これを学歴で見ると、低学歴者の給料が低下し、高学歴者の給料が上昇した。過去の統計を見てみると、大学院卒の給料はこの30年間に大きく伸びたのに対し、高卒の給料はむしろ減少している。IT時代に入って学歴による所得格差はますます拡大する傾向にある。

 米国全体の失業率は相変わらず高止まりしているが、シリコンバレーでは求人難である。この春にはフェイスブックをはじめとするソーシャルメディアのベンチャー企業が上場し、たくさんの高所得者が生まれた。フェイスブックに続きたいベンチャー企業は人材確保に必死になっているが、欲しい人材は払底している。特にソフトウェアエンジニアが足りない。たいした経験のないエンジニアに法外な高給を払って採用する状況が続いている。

 機械による労働代替は全世界ベースで進むと見られ、中国で電子部品の製造を行うフォックスコンですら、これから3年間に10万台のロボットを購入して労働力の代替を進めるとしている。ロボット、コンピュータ制御の工作機械、コンピュータによる在庫管理の発達が単純作業者を代替していくのに対し、データ可視化、データ解析、超高速コミュニケーションといった高度なITが絡む職種の価値は上昇していくと見られる。

2.スーパースターと一般人の格差

 アナログレコードがCDになり、いまではウェブサイトからダウンロードして手軽な価格で音楽を聴けるようになった。デジタル技術で複製が簡単にできる音楽の世界では、人気のある少数のトップ・アーティストにダウンロードが集中するようになった。チェロ奏者のヨーヨー・マ、ポップ歌手のレディー・ガガの収入は大きく伸びたが、彼ら以外の多くのアーティストは苦戦した。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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