(1)マクロレベルの変化
労働力に起こる「3つの流れ」

 まず、マクロな労働力の流れについて考えてみよう。大きく分けて、3つの流れが指摘できる。1つ目は、「都市から地方へ」の流れだ。現在の緊急事態宣言がもし終わったとしても、3密を避ける、いわば「嫌密」ムードそのものは長期化するだろう。東京を中心とした都市への人口流入が続いてきたが、こうした流れは鈍化し、逆に地方・郊外への流れが強化されるはずだ。テレワークのさまざまなITツールを使えば、業務がかなりの程度できてしまう企画系のホワイトカラーを中心に、都市の生活費の高さを避け、より安く生活できる地方へ流れていくことが予想される。

 2つ目は、産業構造転換に伴う、業界をまたいだ労働力の移動だ。日本の経済は産業構造転換の遅れが目立っていたが、この未曽有の外圧によって、それは強制的に進む。連日報道されている通り、観光、航空、宿泊、娯楽、外食などの業界から厳しい企業淘汰はすでに進行している。帝国データバンクによれば4月27日時点で、新型コロナウイルス関連の倒産や法的整理準備の企業は全国で100件に達した。それに代わって、労働力は情報通信産業を中心とした発展産業に移動していくだろう。

 この「都市から地方へ」の流れと産業構造転換が重なる場所が、新たな「地域活性」の舞台となっていく。どこでも働けるようになり、人の密度を嫌うようになった人々から、地方・郊外で活発な経済活動を営み始めるだろう。日本の人口減少そのものは変わらないため、地域レベルでの人材獲得と企業誘致の競争が激化していくだろう。

 3つ目は、グローバルな労働移動の鈍化だ。近年、日本は外国人材の急速な流入が続いてきた。法務省の統計でも昨年末の時点で在留外国人は293万人と過去最大を記録し、ここ10年で84万人以上の増加を記録していた。2019年4月からは特定14業種での特定技能資格の創設など、日本は、外国人「受け入れ」国へと、大きな変化の途上であった。

 しかし、その流れはコロナ禍で寸断される。地域間の感染拡大のタイムラグがあることによって、一度収束した地域も、第二波、第三波のリスクを予防するために入国制限を設け続け、グローバルな労働移動は鈍化するだろう。特に技能実習で労働力を確保してきた中小・零細企業の現場は、極めて苦しい状況に置かれることになる。