「読みやすい」と「教えやすい」が
両方そろった書体がない!?

 日本語の文字は、「筆文化」が基礎にある。学校の文字学習では、書き順をはじめ、「はらい」や「とめ」、力の入れ加減による線の「太さ」と「細さ」などが重要視される。そのため今まで教科書には、そのような文字学習に適した筆文字風の書体が採用されていた。

 しかし、現場からは「一般的な教科書体が読みにくい子どもがいる」という声が上がっていた。この声を聞き逃さなかったのが、書体デザイナーである高田裕美さんだった。

「教える先生にとっては、筆文字ベースでできている一般的な教科書体が文字を学び始めた子どもに指導しやすい。一方で、ロービジョンの子どもには、線の太さの強弱や『心』や『水』にある、はねの先の細さなどが読みにくいのです。現場の先生たちは、一部の子どもたちにはゴシック体や丸ゴシック体のような線の太さや流れのトーンが均一な書体のほうが読みやすいことに、すでに気付いていました。しかし、ゴシック体はデザイン性が強いため、授業で教える文字とは画数や形状が異なり、文字を正しく書く『書写』のルールが教えにくい。なんとかならないかと思ったのが、十数年前の開発の始まりでした」

 意外にも「読みやすい」と「教えやすい」の両方の機能を備えた書体が、教育現場にはなかったというのだ。「UDデジタル教科書体」は、この教育現場の課題解決に取り組み、文字の太さの強弱を抑えながら、点やはらい、画数、筆順を学習指導要領に準拠する、画期的な書体だった(図表1)。そして、開発の前後に行う実証テストでは、ロービジョンだけでなく、文字の読み書き学習に困難を抱えるディスレクシアなど他の障がいにも有効なことがわかった。

教育現場で話題!子どもの学習意欲を上げる「UDデジタル教科書体」とは?「UDデジタル教科書体」は、辞書や英会話学習アプリなど幅広い分野で利用されている。2018年の第12回 キッズデザイン賞 特別賞を受賞した
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