出稼ぎ労働者の入国を
無期限で停止に

 タイ政府がここまで国境に対しての警戒心を露わにするのには訳がある。

 25人が発見された前日の4月25日、スンガイコーロックから西北西に約200キロ、マレーシア・クダ州と面するソンクラー県サダオで、新型コロナウイルスの感染者が一気に42人見つかった。国内の新規感染者がここ数日間10人台で推移していた矢先の出来事。約2週間ぶりとなるショッキングな数値が、心配した第2波ではないかと恐れられたのだった。

マレーシアとの主要な陸上貿易路でもあるソンクラー県サダオの国境
マレーシアとの主要な陸上貿易路でもあるソンクラー県サダオの国境(2019年、小堀氏が撮影)

 感染者42人の内訳は、ミャンマー人が34人、ベトナム人が3人、マレーシア人が2人、カンボジア、インド、イエメンがそれぞれ1人。

 全員が不法就労の外国人で、ソンクラー県の簡易宿泊所などで検挙された。サダオの入国管理施設に収容し、検査を受けさせたところ感染が判明したのだという。5月4日にも同様に別の外国人18人が陽性反応を示し、拘束されている。

 これら全員は全土が封鎖されているはずのマレーシアから陸路越境したか、ミャンマーから長駆南下してきた可能性が高い。しかし、取り調べに対し黙秘している者もいて、具体的な足取りや就労の実態については詳しく分かっていない。

 多くは南部に広がるアブラヤシのプランテーション農場か建設現場などで働いていたものと警察はみているが、処罰を恐れ雇用主が名乗り出ることも少なく、実像は闇に包まれたままだ。

 こうしたことを受けタイの労働省は、周辺国から出稼ぎのため入国する外国人の新規受け入れを無期限で停止する措置に踏み切り、直ちに関係機関に通達した。

 建設現場の作業員や農業従事者、住み込みで家事を請け負う家政婦など、タイで働く外国人労働者の合計は、新型コロナ騒動の直前で推定500万人にも上る。国内の社会経済に及ぼす影響を考慮してもウイルス対策は急務と判断した。

 一方、現在もタイ国内にとどまっている外国人については査証(ビザ)の更新手続きを免除し、11月30日まで滞在を認める決定もした。国境への移動と密集、混雑を抑えることが目的だ。

 ミャンマー東部カイン州ミヤワディの国境では、対岸のタイ・ターク県メーソートから帰国したミャンマー人の出稼ぎ労働者がウイルスを持ち込み、これが感染源の一つとなったことが分かっている。そして今なお、タイ側の同国境には、2万人近いミャンマー人が国境の開門を待っている。

タイのターク県メーソートからミャンマー東部カイン州ミヤワディを目指す数万のミャンマー人労働者(3月30日、タイのテレビ局チャンネル7から)