パナソニックは4月27日、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年3月期の売上高予想を下方修正したが、それでも利益予想は据え置いた。5月18日に発表された実績は、ほぼ想定通りの結果となり、一見まずまずの決算となった。だが、ポストコロナのパナソニックは順風満帆とはいえそうもない。特集『電機・自動車の解毒』の#11では、その理由を解説する。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
コロナで下方修正を回避できたのに
「利益」が前期比3割減の理由
「ほぼ想定通りの数字に終わったってことですかね……」。5月18日にパナソニックが発表した2020年3月期決算を受け、あるパナソニック社員は控えめにこうつぶやいた。良くも悪くもサプライズなき決算だったため、こう表現するよりなかったともいえる。ただし、ひょっとするとパナソニック幹部は、これをまずまずの結果だったと評価しているかもしれない。
というのも、パナソニックは4月27日、新型コロナウイルスの感染拡大によって20年3月期の売上高予想を大きく下方修正したものの、営業利益については19年3月期決算の公表時から「3000億円」の予想を死守。間接諸経費の圧縮といった固定費の削減を徹底し、2938億円という“誤差の範囲”で着地させることに成功したからだ。
もっとも、営業利益2938億円というのは19年3月期の約7割の水準であり、決して褒められた数字とはいえない。
パナソニックは新たな賭けに出たはずだった。家電を扱うアプライアンス社や電材を扱うライフソリューションズ社の「中国シフト」と、事業の「抜本的な構造改革」を同時に行う賭けである。そんな矢先に、中国を発生源とする新型コロナウイルスが世界にまん延し中国が混乱に見舞われた。一方、構造改革については、赤字に転落していた太陽電池や液晶パネル、半導体の事業の撤退・譲渡等にようやく動いた他、パナソニックホームズをトヨタ自動車との合弁会社に移管し、住宅事業の切り離しも行った。
こうした事業ポートフォリオの入れ替えに伴い、テレビを生産するメキシコの工場の閉鎖等にも乗り出しており、収益改善費用がかさんで営業利益が押し下げられている。
とはいえ、事業譲渡益の計上や、設備投資や在庫の抑制などにより、フリーキャッシュフローは2242億円と、19年3月期の103億円から大幅に改善。昨年11月に開催した投資家向け年度計画説明会「Panasonic IR Day 2019」で22年3月期までに行うと表明した「構造的赤字事業の撲滅」や「低収益事業の方向性の決定」に向け、ポートフォリオ、および財務の健全化が一定程度、進んだ格好だ。