電機・自動車の解毒#12
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新型コロナウイルスの感染が終息しても、コロナ前の世界にはもう戻れないだろう。ただでさえ、消費が低迷しているというのに、人々の価値観と生活スタイルは激変しており、移動需要の一部は“蒸発”しそうだ。『電機・自動車の解毒』の#12では、移動に関わる自動車や航空機業界で迫られそうなビジネスモデルの解体的見直しについて追う。 (ダイヤモンド編集部 新井美江子)

コロナが招く最悪のケースは金融危機
リーマンより大きい経済インパクト

「リーマンショックよりインパクトははるかに大きい」(豊田章男・トヨタ自動車社長)。産業界は今、新型コロナウイルスの底知れぬ恐怖におののいている。

 コロナショックが経済に与える影響は甚大だ。金融機関の信用不安から始まり、徐々に消費をむしばんでいったリーマンショックとは違って、コロナは発生当初から人々の生活をいきなり傷めつけた。世界各国で移動が強烈に制限されたことで、生産から物流、サービス、そして消費まで全てが一気に滞り、日常が失われていったのだ。

 コロナの世界的な終息時期もまだ見通せていない。感染まん延が長引けば長引くほど企業の業績は落ち込み、給与の引き下げや雇用不安でさらに消費が落ち込んでいく……。そのまま債務者の信用不安がはびこるようになり、金融危機にまで発展すれば、それこそ大恐慌が始まってしまうだろう。世界的に、しばらく消費は落ち込むと見てまず間違いないだろう。

 実際に、足元の自動車の販売台数は激減している。自動車業界に強いコンサルティング会社、アーサー・ディ・リトル・ジャパンの予測によれば、20年の販売台数は楽観的に見ても前年比で約20%も落ち込む見込みだ。コロナ前の世界9000万台市場に回復するのは、コロナ対応が長引き、需要減退が広範化・長期化する「ベースシナリオ」であれば23年以降である。

 一方、今までの常識が通用しなくなった前代未聞の事態を前に、人々の価値観は激変した。八郷隆弘・ホンダ社長が「(コロナが終息しても)世の中は単純にコロナ前に戻るわけではない」と予測するように「ニューノーマル(新常態)」が始まろうとしている。