日本で医療崩壊が起きない理由として、『コロナで絶体絶命のイタリアと違い、日本で死者激増の可能性は低い理由』の記事で、「日本は病院ベッド数が多く医療キャパシティーが大きいこと」、そして「そこで働く医療者のモチベーションが高いこと」を指摘した。一方、海外の死亡者数が多い理由は、医療キャパシティーが少なく、医療崩壊が起きたためと指摘させていただいた。

 今回は、なぜ日本で死亡者が少ないのかについて、もう一つ気がついたことがあるので、それを報告したい。

 それは「高齢者施設における死亡者数」の差である。

 知られているように新型コロナウイルスは、高齢者の死亡者数が多い。つまり、高齢者施設でのクラスター発生は相当数の死亡者を生み出してしまう。

 米国では、高齢者施設がクラスター化している例の報告が多い。報道によれば、全米の死者の5分の1を占める約7000人に上るという。日系人も多く入居し、安部首相夫人が訪問したことでも有名で、筆者も訪問し調査をさせていただいたことがある、ニューヨーク・マンハッタン北部の高齢者施設「イザベラハウス」(写真)では、98人もの死者が出た。

イザベラハウスの内部
イザベラハウスの内観

 高齢者施設の1日の死者としては過去に例を見ない人数で、このうち46人は新型コロナウイルスの感染が死因で、残り52人は「その疑いがある」とされている。また英国では、毎日発表している死者の集計方法を4月末に変更し、高齢者施設などで亡くなった人の数も含めるようにした結果、死亡者数が急増した。

高齢者施設の感染は
隠すことができない

 海外での介護の現状を見てみよう。表1にあるようにヨーロッパは介護関連施設(細かくはいろいろ区分があるが本稿では高齢者施設とする)が充実している。そして北欧では介護従事者の数も多い。高福祉国家の面目躍如といったところであろうか。

【表1】

 さて、日本での高齢者施設死亡者数はどうか。日本では表2にあるような高齢者施設死亡の統計がないので、時々話題になる新聞記事などのデータから追うしかない。

【表2】

 4月下旬の報道によれば、千葉では、新型コロナウイルスに感染して死亡した約半数の17人が高齢者施設の入居者だったという。群馬県伊勢崎市では、入居者・職員ら関係する67人が感染し、15人が亡くなった有料老人ホーム「藤和の苑(その)」(人数は5月1日現在)の例がある。

 しかし、ほかの県では話題にならないし、千葉のケースはどちらかといえば対策が不十分であった時期のものだ。

 何が言いたいのかと言えば、高齢者施設の感染は隠すことができないので、それが諸外国ほど話題になっていないのは間違いないということだ。

 そして、表1、2を見比べてもらえばわかるように、福祉国家として多額の介護費用を投入し、施設数も多く、さらに介護者数が多い北欧諸国でも、高齢者施設での死亡者が多い。一方、欧州で対応がよかったとされるドイツでは高齢者施設の死亡は相対的に少ない。これは、医療のキャパシティーと異なり、介護のキャパシティーが大きいことと、感染による死亡者数が無関係であることを示す。死亡者の多寡にはほかの理由があるはずだ。ここで筆者は、「1000人当たり(2017)介護ベッド数(うち病院)」の病院の比率に注目した。