入社後のミスマッチを防ぐために

徳谷 先ほどの、外から見たカルチャーと、中から見たカルチャーが一致するとも限らないという話に戻ると、会社説明会や面接で抱いた企業イメージを100% 鵜呑みにするのは、どうかと思うんです。僕の肌感覚だと、2、3割程度と捉えたほうがいいかと。

熊谷 よく見かけるのは、採用イベントで、超かっこいいエース社員が、人事サイドが準備したすさまじくかっこいいパワーポイントを使って企業説明をする姿です。目がハートになって帰っていく学生を見ると、大丈夫かなと少し心配になります。

徳谷 採用イベントは、利害関係がある中での情報収集なので、そもそもフェアじゃないんですよね。企業側が、学生に興味を持ってもらいたいという目的を持っているので、ネガティブと捉えられかねない情報をわざわざ開示することはしないですし。

熊谷 それと、実際に一緒に働く人は「採用イベントで会った人」でも「面接してくれた人」ではないこともありますからね。こんなはずじゃなかった、とならないように、学生には正しい情報を集めてもらいたいものです。

とはいえ、完璧を求めすぎないことも大切

熊谷 見た目のカルチャーに惑わされないよう、学生はどのように企業研究をすべきでしょうか。

徳谷 まずは利害関係のない社内の人間と接点をもつか、OBOGの話を聞くことでしょうか。
なぜなら、リアルな接点をつくることがカルチャーを見極めるうえでは大切だからです。

直接コミュニケーションをとれば、社内の事例や、公開していない傾向も見えますし、あるいは「自身にどのあたりが合いそう・合わなさそうですか」など言葉のキャッチボールで先方がヒントをくれたりする。双方向で情報をとるほうが、質の高い情報がとれます。

一方、ネットで調べる行為は、調べる側が一方的に知っているだけの「ワンウェイ」(一方通行)です。SNSなどの口コミもすべては鵜呑みにしないほうがいいですね。大げさに伝えられているケースがありますから。

あとは、会社として大事にしている共通の価値基準やビジョンも参考になります。業務は違えどその会社に共通するものがあるのか、形骸化しているだけなのかは、それこそリアルに会う中で、見極めたほうが良いと思います。

熊谷 僕も、学生には「一次情報を取りに行きましょう」と指導しています。徳谷さんがおっしゃったみたいに、採用イベントで学生が最初にふれる情報は「加工」されている情報だと思ったほうがよく、自分で取りに行った一次情報はリアルな情報です。今はなかなか大変ですが、足で稼ぐのは大事なことですよね。

徳谷 ただし、企業との相性ばかりを過剰に気にするのもよくないでしょう。人との出会いと同じで、「私に100%マッチする最高のお相手じゃないとお付き合いできません」なんてことをしていたら、永遠に関係はできないまま。完璧を求めすぎず、自分が実際に触れて感じた感覚を大切にして、都度アップデートしていくとよいかなと思います。

※次回は、上司に自分のキャリアを邪魔されない方法について語り合います(2020年5月18日更新)。