日本の健康保険制度は、大きく分けると、(1)労働者のための「職域保険(被用者保険)」、(2)都道府県単位の「地域保険」の2つで構成されている。

 職域保険は、企業や団体などに雇用されている労働者のための健康保険。雇用されて働く人を「被用者」というため、「被用者保険」とも呼ばれる。中小企業などの従業員が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」、大企業などの従業員が加入する「組合管掌健康保険(組合健保)」、公務員などが加入する「共済組合」、大型漁船などの乗組員のための「船員保険」などがある。

 地域保険は、都道府県単位の「国民健康保険(国保)」で、住んでいる地域ごとに運営されており、農業や漁業などの一次産業従事者、自営業者のほか、パートなどの非正規雇用、無職の人などが対象だ。

 地域保険には、建設業や美容師、弁護士など特定の業種の個人事業主のための「国民健康保険組合(国保組合)」、75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」もある。

 このなかで、傷病手当金をもらえるのは、(1)の被用者保険に加入している人だ。

コロナ対策で急遽打ち出された
国保加入者への傷病手当金支給

 被用者のための健康保険法では、第52条で「被保険者に係るこの法律による保険給付は、次のとおりとする」として、「傷病手当金の支給」が法定給付として明記されている。つまり、会社員や団体職員などは、病気やケガで仕事を休んでも、健康保険で所得保障されることが法律で認められているのだ。

 一方、国保は、国民健康保険法第58条の2で、保険者は、「前項の保険給付(筆者注:出産育児一時金、葬祭費)のほか、条例又は規約の定めるところにより、傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができる。」としており、傷病手当金は法定給付ではない。支給するかどうかは、各保険者に委ねられている。

 傷病手当金は、病気やケガで「労務不能の状態」の人に給付されるものだ。農業者や漁業者、自営業者は、自発的に働いたり、休んだりすることを決められるので、第三者が休業の判断をするのは難しい。収入も一定ではないので、会社員のように標準報酬月額を基に支給額を決めることもできない。

 なにより、国保は軒並み厳しい財政運営を強いられているため、都道府県国保で傷病手当金の制度を設けているところはない。

 特定業種で作られている国保組合も、傷病手当金の制度があるのは、医師国保や歯科医師国保、土木国保など、財源に余裕のある一部の組合だけだ。

 実質的に、傷病手当金は被用者保険独特の給付となっている。

 だが、3月10日に出された「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策 ―第2弾―」で、国保加入者でも一部の人に対しては、国が特例的な財政支援を行うことで、傷病手当金を支給することが打ち出されたのだ。

 この特例措置の背景には、国保加入者の3割がパートやアルバイトなど非正規雇用の被用者で占められているという現実がある。