家にいよう──が続き、サルコペニア(加齢に伴う筋骨格量と筋力の低下)のまん延が懸念されている。
もしも筋トレが苦手なら、最も簡単かつ最強の運動プログラムは「ラジオ体操」だ。
京都府立医科大学の研究グループは、血糖管理を学ぶために同附属病院に教育入院していた2型糖尿病(2DM)患者42人のうち、15人(男性11人)に、朝食前と夕食後の1日2回、筋力の強化を目的とした「ラジオ体操第二」を行うよう指示。
入院中の体重、筋肉量を示す除脂肪体重、サルコペニアの指標である骨格筋量指数(SMI)の変化を非ラジオ体操群と比較した。食事は病院食のみとし、間食やサプリメントの摂取は禁止した。このほか、42人全員に一日60分間程度の有酸素運動(ウオーキングなど)を行うよう指導している。
入院前後で体重の変化をみると、両群ともに有意に減少。その一方、ラジオ体操群では、除脂肪体重とSMIは維持できたのに対し、非体操群では入院前よりも有意に減少していた。つまり、筋肉量と筋力が明らかに落ちたわけだ。
詳しくみると、ラジオ体操群でSMIが低下したのは46.7%に留まったが、非体操群は85.2%に上った。さらに非体操群では腕や体幹の筋肉量が減少していたが、ラジオ体操群では増加傾向が示されていたのである。
研究者は、2週間程度の入院でも「筋力が低下する」リスクを指摘し、入院期間中は運動療法が必要だとしている。本報告の対象は2DM患者だが、健康な人でも身体活動量の低下は筋力の低下につながる。
現行のラジオ体操のうち、第二体操は第一よりも運動強度が高く、筋力アップと血行促進を目的とした動作がポイント。座りっぱなしの健康リスクを避けるためにも、テレワークの合間に体操タイムを挟むといいだろう。
また自宅で運動量を上げるもう一つの手段は「家事労働」だ。ラジオ体操第二に匹敵する運動強度の家事は、ズバリ「床の雑巾がけ」と「風呂掃除」、そして「庭の草むしり」である。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)