新型コロナウィルスの影響でリアルのイベントは軒並み中止に追い込まれているが、こんな時代だからこそ、注目されているイベントがある。
コンピュータを介したオンラインイベントだ。
5月13日、honto主催によるペア読書会が開かれた。『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』を出版した阿部広太郎氏を囲むオンライン読書会だ。
午後7時半、ネット上に二十数人の読者が集まり、読書会を開始。主催者によるガイダンス後、参加者がそれぞれ「自分につけるキャッチコピー」を掲示板に書き込む。そして約25分間、1章とそのほか気になった章を読む。その後グループに分かれて質問をまとめ、著者にぶつけるという構成だ。
午後8時半、いよいよ著者である阿部氏が登場。まず参加者全員のキャッチコピーについて講評。続いて一問一答へ。どんな質問が浴びせられたのか? その中身を再現する。

コロナの時代に大切なのは「手洗い、うがい、笑い」<br />阿部広太郎オンライン読書会レポート

「素敵禁止」と掲げたが故に
「素敵」と言えなくなっちゃった

――阿部さんは本業のお仕事が忙しい中でも、興味を持ったことに対して企画書を作って提案されている。時間の捻出はどのようにされているんですか?

阿部 止められてもやりたくなる、自分が引っ張られるものだけをやっていくようにしています。例えば「企画でメシを食っていく」という講座は、僕自身がこの場を企画することで、出会う人が変わっていく、その瞬間を見るのが好きなんです。その時間が作りたいから、仕事を終わらせた後に1時間だけやったりして。プラスアルファでやるのは好きなことだけ、やって楽しいことだけです。

――光の当て方、切り取り方で言葉の表現は変わってくると『心をつかむ超言葉術』には書いてありますが、着目するときのコツはありますか?

阿部 相手に合わせて話を選ぶことも大切ですね。自己紹介で仕事の話をするときは、同世代の方であればロックバンド「クリープハイプ」の宣伝に関わった時のことを話す。上の世代の方であれば東進ハイスクールの「今でしょ!」のCM制作に携わったことを話す。相手と共通の話題がどこにあるかを考えて、自分の仕事のどこに光を当てるかを変えるようにしています。

――「現場には5倍の情報がある」と書いてありました。でも今のコロナの状況では現場に行けない。そういう場合は情報のとり方はどのようにしていますか?

阿部 リアルで会うとたくさんの情報が手に入ります。例えば打ち合わせをしていても、相手の微妙な表情とか仕草から、いろんなことを読み取ることができる。でもオンラインだと難しい。めちゃくちゃ模索中です。SNSの良いところは、自分が面白いと思っている人が、どんなことを面白いと思っているのかを知れるところ。意識してネットで気になる人を追いかけるようにしています。

――「素敵禁止」(あることを素敵だと思っても、安易に素敵と表現しない)という考え方が面白かったです。ベストな言葉をみつけるために、どのくらいねばっているのですか?

阿部 「素敵禁止」と掲げたが故に、余程のことがない限り素敵って言えなくなっちゃったところはあります(笑)。でも素敵と言わないからって、何も言えなくなっちゃうことは避けたい。「素敵」と使いそうになったとき、ちょっと手を止めて逡巡するのは1~2分ですね。スマホに入れた辞書などで調べてみる。あとはシソーラス(類語辞典)で検索して言葉を探す。得意技を封じたことで、言葉のストックは増えた気がします。1~2分でも、10分でもいい。どうしようかなと自分の中で逡巡することが大事。でも考えすぎて言葉が見つからないときもある。だから皆さんは素直に「素敵」って言っていいんですよ(笑)。言ってもらえると、とても嬉しいですし。

――直感力はどうやって鍛えたら良いですか?

阿部 頭の中で思ったことを完璧に言葉にできることって、実はそんなに多くないです。僕の場合、一番手応えを感じるのは、プレゼンなどで相手が納得して喜んでくれたり、感動してくれたりしたとき。自分の中で感覚がレベルアップしているように感じます。相手の表情が変わったその瞬間に、感覚の筋肉が強くなっている気がします。

――「カメラで撮るように書く」というアドバイスが印象に残りました。でも何を撮れば良いのでしょうか?

阿部 写真にはまってたとき、写真家の友人に「どうやったらカメラマンになれるんですか」と聞いたことがあります。その人は「撮りたい人がいればいつでもカメラマンになれますよ」と。書きたい人、書きたいことがある、言葉にならない鳥肌が立つような瞬間がある。ただそれを書き残すだけでいいんです。その感覚を信じてください。

――今ちょっとゾワっとしました(笑)。

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