WEB選考を始めたことによるメリットは、東京スター銀行と同様に、地方学生との接点が増やせたこと。これまで選考地は、東京や愛知、大阪、福岡に限られていたため周辺の学生が多くを占めたが、今年はさまざまなエリアからの参加者が増え、エントリー数は前年比130%に伸びたという。

ワタベウェディング,WEB面接WEB面談を行うワタベウェディングの越田恵子氏。面接のために出張することがなくなった時間を学生との面談にあてられるようになったという 提供:ワタベウェディング

 もう1つ大きいメリットが、人事担当者の負担が軽減されたことだ。人事の拠点は東京のため、これまで選考の際に愛知や大阪、福岡へ出張していたが、その必要がなくなった。それによって生まれた時間を、学生からの不安や疑問の解消につなげる1人あたり30~45分ほどの「面談」の時間に置き換えられるようになったという。

 一方で、越田氏がWEB面接のデメリットとして挙げるのが次の2点だ。

 1つが、ネット通信環境の問題。自宅では十分なネット環境がない学生もおり、面接のスタート時間が遅れてしまったり、参加できない学生もいたりするという。こうした問題もあることから、1回あたりの面接時間も対面では30分だったところを45分に延ばしており、1日の面接件数は減っている。その分、日数や面接官を増やして対応せざるを得ない。

 もう1つが、「共感力」があるかなど学生の雰囲気がわかりづらい点だ。WEB面接だと、学生は会社の雰囲気がわからずに困っているとよくいわれるが、企業も同様に学生の雰囲気がつかみづらいという悩みがある。

「ウエディングの仕事では、お客さまの話をしっかり聞く共感力やホスピタリティが重要になる。WEBを使ったグループ面接などでも、他の人の話を聞く様子から共感力を見ているが、画面上ではわかりづらい部分がある。仕事もチームでの仕事になるため、コミュニケーション能力も重視したいが、これがなかなかつかめないのは課題だ」(越田氏)

 だからこそ、同社でも最終選考においては対面式を希望しているというが、新型コロナウイルスの終息が見えない中で、その時期や内定出しのタイミングについては確定できないため、苦悩しているという。

 この2社の事例から分かるように、WEB選考を始めたことで、企業側は意外な効用を感じている一方、WEBでは自社の雰囲気などの情報を伝え切れず、学生のコミュニケーション能力などのソフトスキルもつかめないため、やきもきしているのが現状だ。

 コロナの感染者数が減少に転じ、対面式の面接が徐々に可能になってきたとしても、感染リスクがなくなるわけではない。今後は、WEBではどうしてもつかみ切れない情報を補うために、安全対策を行いながら対面を組み入れる。そんな企業にとっても学生にとっても望ましい新卒採用プロセスの構築が、withコロナ時代には求められている。

【参考資料】
マイナビ「<緊急>2021年卒 企業新卒採用予定調査」