「値決めは経営」

小林:なぜ以前はテイクレートという用語があまり使われていなかったのかを考えてみたら、テイクレートだけではビジネスの構造を説明できない会社が多かったからだと思います。

例えば、プラットフォームの代表的企業である楽天。楽天は、売上歩合のテイクレート以外に、店子に対しての広告販売や、固定費としての出店料で売上を構成していました。そのため、テイクレートだけでは、売上の一部しか説明していないことになります。

一方で、最近のプラットフォーム型ビジネスの多くは、テイクレートの概念が売上の中心になっているものが多いため、テイクレートに対する注目度が増しているのではないかと思います。

朝倉:ビジネスのタイプによっても異なりますが、流通総額や販売量、コストなど、最終利益に影響する因子は数ありますが、その中でもテイクレートの利益に対する影響力は大きいですからね。

小林:非常に大きいと思います。

朝倉:一方で、プラットフォーム型ビジネスを志向するスタートアップの中には、テイクレートの改善をあまり重視していないんじゃないかと感じることもあります。いったんテイクレートを定めたら、それを固定したものと捉え、ある種の思考停止に陥ってしまっているように感じることもあります。

テイクレートは利益に対する非常に重要な因子ですから、どうやったら上げることができるのか、高すぎず、顧客に対してフェアな水準はどこなのかを探ることは、利益に直結する重要な論点だと思います。

村上:「値決めは経営」とは昔からよく言われてきたことです。数十年前まで、主要産業が製造業であるなか、「苦労して作ったものをいくらで売るのか」は、経営において最も重要な指標だったと思います。

一方、最近トレンドになっているビジネスは、自分で0から作ったプロダクトをいくらで売るかではなく、プラットフォームの提供によって既存のサービスやプロセスを効率化するビジネス、あるいは付加価値を提供するビジネスが多いため、テイクレートの重要性はより増しているのかもしれません。

朝倉さんの「程良いテイクレートの水準とは?」という問いは、昔でいう「値決めはどうするのか?」という問いとほぼ同義だと考えています。

朝倉:その通りですね。以前にもお話ししたことがありますが、少し前までは、オンライン上で全て完結するようなビジネスが多かった。一方で、Uber然り、Airbnb然り、近年ではリアルに存在するアセットに紐づいたネットビジネスの存在感が増しています。

言い換えれば、オンライン・デジタルで完結したメーカー的な機能を提供するスタートアップよりも、卸機能のような立ち位置のスタートアップが増えてきていると見ることもできるんじゃないでしょうか。それに伴って、テイクレート、つまり「卸機能の手数料比率はどの程度なのか」が重要な指標となるスタートアップが増加したのかもしれません。
 

*本記事はVoicyの放送を加筆修正し(ライター:代麻理子 編集:正田彩佳)、signifiant style 2020/3/29に掲載した内容です。