背中から痛みが始まり
腰に痛みが移動する「大動脈解離」

――腰痛で、心配すべき病気には、どのようなものがありますか。

 実は背中と腰は、どこまでが背中でどこまでが腰か明確な定義はないので、われわれは「腰背部」として、まとめて考えることにしています。

 例えば、大血管である大動脈は、背中から腹まで通っているので、病気のときは両方痛みます。最初は背中が痛いと言って来院したのに、今聞いたら腰が痛いと言っているというような場合、「あなたさっきは背中って言っていたのに今は腰ですか、いい加減ですね」とはならない。

 なぜなら背中から痛みが始まって、腰に痛みが移動するのは、「大動脈解離」という病気の特徴だからです。痛む場所は時間経過で変わっていくことがあるので、背中と腰は一つ、切り離さずに考えます。

――大動脈解離は、腰背部に痛みが出るんですね。

 大動脈は心臓から送り出される血液が最初に通る、人体の中で最も太い血管です。樹木でいえば幹のような存在で、血管は大動脈から枝分かれして、体のすみずみまで血液を運んでいます。大動脈解離は、その太い血管が、裂けたり割れたりする病気で、背中の激痛では胸部大動脈解離が一番多くて、一番怖い病気です。

――ほかには、背中の痛みで心配される病気はありますか。

 食道の病気ですね。胸痛が多いですが背部痛もあります。逆流性食道炎がその代表ですが、そのうち最も重篤なものは食道がんです。ただ、心臓、大血管に比べたら、一刻一秒を争う病気ではありません。

――背中の場合、痛くはないけれど違和感がある…ということもありますが。

 その違和感が急に起こったもの、あるいは徐々に悪化しているものでなければ大丈夫です。背中がなんとなく重いとか違和感があるというのはだいたい筋骨格形の問題で、多くの場合筋肉の痛みです。上半身を動かして悪化する、または改善するのが特徴です。なので一般的な筋肉へのケアでなんとかなります。

 例えば、パソコン作業で前傾姿勢になっていると、常に背中の筋肉に負荷がかかっている状態になり、筋肉がいつも緊張し、当然血液の流れが悪くなりますよね。血管は筋肉の中を走っているので、筋肉が緊張すると血流が悪くなるのです。

 すると、老廃物がたまって痛みの原因になる。慢性痛ですね。その場合は、ずっと痛いし、ずっと重い。

 日常生活の習慣を改善しないと、完全に痛みを取るのはなかなか難しいのですが、生命に関わる病気ではありません。