腰痛の原因には「力学的」と
「非力学的」がある

――腰痛では、どのような病気が考えられますか

 背中の下の方から腰にかけては、心配な病気がいっぱいあります。なんといっても腰は人体の要ですからね。その98%が筋骨格系の疾患が原因で、すべて体動で悪化するという特徴があります。残りの2%は体動で悪化しないパターンで、これは内臓疾患が原因となります。

 前者、すなわち筋骨格系の腰痛は、「力学的な原因」で悪くなっているものと、「非力学的な原因」つまり力学が関係せずに悪くなっているものとの2つに分類されます。肩には力学的な問題は起きにくいため、こうした分け方はしませんが、腰の場合は力や体重が加わりやすいので、こうした分け方をしています。両者とも、ひねったり曲げ伸ばしなどの体動で悪くなるのが特徴ですが、腰痛全体の97%は力学的な原因によるものが占めており、非力学的な原因は1%です。

 力学的なものは、椎間板ヘルニア、ぎっくり腰、腰椎捻挫など、姿勢の悪さも含めて、よくある病気が大半です。横になると、負荷が加わりにくくなって楽になるのも特徴です。重症化することは少なく、受診するなら整形外科かペインクリニックですが、日常習慣の改善が重要になります。

 一方、非力学的な腰痛は、重さとか力は関係なく痛みが出るもので、特徴は、どんな姿勢をしていても痛み、横になっても改善しないばかりがむしろ悪くなります。原因となる病気は深刻なものが多く、高齢者で発症するのは「多発性骨髄腫」という血液のがんです。骨の中にがん細胞ができて増殖し、骨が膨らむと物すごく痛む病気です。そういう患者さんは横になっても楽にならないばかりか、腫瘍も炎症も、横になっていると患部に血液が増えて余計に腫れて、悪化する傾向があります。

 なので、夜間に目が覚めてしまうような腰痛は、早めの受診が必要です。

――すると筋骨格系の疾患でも心配なのは、非力学的な原因で起こる腰痛で、特徴としては、どんな姿勢をしていても痛み、かつ横になっても改善しないばかりかむしろ悪化する場合ですね。

 そうですね。非力学的なものでは、がんのほか、「化膿性脊椎炎」など細菌の感染による腰痛も注意が必要です。患者さんは抵抗力の低下した高齢者や糖尿病のほかに、ステロイドを服用している方にも起こりやすいです。ほとんどは高熱と腰や背中の激痛を伴い、重症化すると下肢の麻痺(まひ)が起こることもあります。

 椎間板に近い所は細菌がすみやすい環境な上に見つかりにくいため、「原因不明の熱」ということで、なかなか原因を特定してもらえないケースも少なくないのですが、後遺症を残さないためには早期発見が重要な病気です。