一方、株価の戻りのスピードとレベルに対しても意外の感を持つ向きが多いのではないだろうか。現在の株価は、日米ともに、直近の高値から数%下まで戻っていて、あたかも「コロナショック」などなかったかのような水準に戻っている。米ナスダック総合指数に至っては、6月8日に最高値を更新した。

 米国では、ニューヨークなどの主要都市がやっと経済活動を再開し始めたところであり、最悪からリバウンドしたとはいえ、失業率は2桁なのだから、実体経済の状況と株価に大きな乖離があるとの感が否めない。

 海外でもそのように思われていたようで、英経済誌「The Economist」は1カ月前の5月9日の時点で、株価と実体経済の「危険なギャップ」を特集していた。その後、株価はさらに戻りを早めている。

驚異的な株価の戻りにおいて
FRBの功績が大きい理由

 株価の戻りの原因としては、場況解説的には「経済再開への期待から」ということになるのかもしれない。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策の効果が大きいように思われる。

 医療崩壊を避けるためにはやむを得なかったのかもしれないが、世界の多くの国で行われた強硬なロックダウン(都市封鎖)による経済活動の急停止は、いささか「やりすぎ」だったのではなかったか。FRBはこの悪影響を、金融面で相当にカバーしたように思う。

 FRBの政策で大きな効果があったものが2つある。1つは信用リスクがある社債を購入したこと。もう1つは、世界の中央銀行と資金スワップの契約を結んで、世界的なドル供給に対する不安を解消したことだろう。特に、前者は純然たる金融政策の範囲を超えており、中央銀行にとっては半ば「禁じ手」と考えることが一般的だったが、問答無用で手を打った。

 日本の政策にありがちな、様子を見て手段を小出しに投入するような展開にしなかったことは見習うべきだろう。これまで、どちらかというとぱっとしない印象の中銀総裁に思えたのだが、FRBのジェローム・パウエル議長は経済の機微をよく知る有能な人なのかもしれない。