社会人に必須の「コミュニティ運営力」

河原:こうした成果を出すには、やはりコミュニティ運用者の役割も大切だと思っています。廣瀬さんは、コミュニティ運営者の重要性を感じていますか。

廣瀬:事業全体を統括して、場がうまく回っていることをチェックする役割は必要だと思います。コミュニティ運営はまだなじみのない役割なので、いろいろな人がいろいろなことを言います。ただ大切なのは、場に参加する人をうまく調和して、事業を一つにまとめあげていくこと。そのためには全体の設計の力や、混ぜ合わせる強引さ、世話焼きのスキルが必要だと思うんです。

藤田:コミュニティ運営のスキルはあらゆるビジネスパーソンが備えるべきスキルだとも思います。

廣瀬:いろんな人の間に入って物事を進める人は、そういう能力を持っている必要があるでしょうね。ただ仕事自体は完全に黒子なので、その役回りが好きか否かというのもあります。人にいかに気持ちよく踊ってもらうかを考え、その結果として観客がいかに喜ぶかを考えていく。これがコミュニティ運営者の仕事なのだと思います。

河原:コミュニティの参加者は、入れ替わっていますか。

廣瀬:「NoMaps」は、始めてまだ4年目の事業なので、実際にどの程度、参加者が入れ替わっているのかはまだ見えていません。カンファレンスのテーマは毎年変えて、新しいものを見せているので、今のところ参加者が飽きたとは思っていません。個人的には「NoMaps」という箱は変わらなくても、中身がアップデートされていれば、人々は継続して参加してくれると思っています。

 継続性という観点では、むしろ純粋に資金が続くかという方がよっぽど大事です(笑)。イベントの成果をきちんと見せて次につなげないと、新しい投資につながりませんから。あとは長い目で見て一緒に動いてくれる人や仲間を増やすことが大事だと思います。

藤田:運営側はいかがですか。コミュニティ運営者も交代していくのでしょうか。

廣瀬:基本的には交代していくべきだと思います。人が長く変わらないと、どうしてもイメージが固定したり、停滞感が出たりします。長く続けたいなら、やはり新しい人が定期的に参加して、新しい方法で運営することを意識して続けた方がいい。個人的にも早いタイミングで事務局長を誰かに渡したいっていう思いもあります(笑)。

 立てる旗、すなわちビジョンがしっかりしていれば、コミュニティ運営者が変わっても大きな流れは維持されるはずです。私は今の20代の考え方は全く分からないけれど、彼らにもどんどん任せていくべきだなと思います。

社会人の必須スキル「コミュニティ運営力」って何?

河原:仮に、廣瀬さんが誰かに事務局長を託す場合、どんな人にバトンを渡そうと思いますか。

廣瀬:実務で言えば、民間と行政の両方の文脈を理解している人でしょうね。ただ、もっと大事なのは「愛」ですね。地域に対する愛や、社会をもっとよくしたいという思い、すごくシンプルな情熱が大切だと思います。

 それさえあれば、やり方は好きにしていいと思います。そんな人がいたら今すぐにでも代わってもらうんですけど(笑)。

藤田:人見知りなタイプはやはり無理なのでしょうか。