特許無効審判では、有効・無効の判断は特許単位ではなく請求項(クレーム)単位で行われる。1つの請求項でも有効とされれば侵害責任は生じるというわけだ。

 今回の審決の予告では、ファストリが無効と訴えた特許の請求項1~4のうち、3つの請求項が無効とされた。これは、米国にある1つの特許に引っかかったからだ。

 ただし、請求項3は無効とはならなかった。つまりアスタリスクの特許の一部は認められたというわけだ。

 テックバイザー国際特許商標事務所弁理士の栗原潔氏は、「一般論として言えば、請求項3が生き残ったということは、『シールド部が、電波吸収層と、電波吸収層の外側に形成された電波反射層から成る』という構成要素をユニクロの機器が持っているか(あるいは、設計変更で持たないように回避可能か)が今後のポイントになる」と指摘した上で、「この点は実際に機器を開発している企業でないとわからない」と解説する。

 また、審決の予告の場合は、無効とされた請求項について、60日以内であれば特許権者側が訂正をすることが認められる。これをアスタリスクがクリアできれば、審理は継続する。

特許制度は大企業に有利という
最大の問題点が浮き彫りに

 ただし、知財の専門家の間では、審決の予告を出す特許庁の意図は、当事者に和解の可能性を探らせる効果があると判断した場合だと考えられている。

 もちろんファストリ側も、特許が認められた請求項3に関して、セルフレジがそれを侵害していないと主張する戦い方もできる。

 しかし、そもそもアスタリスク側はファストリにライセンス料を求めていただけだったので、金銭的な和解で解決可能だと見るのが妥当だ。

 ただ和解するにしても、ファストリができるだけ有利に事を進めたいと考えた場合、考えられる作戦は「裁判の長期化」だ。