ストレスを避けるための
在宅勤務続行は問題解決にならない
「ストレスを感じること自体、パフォーマンスを低下させるので、個別の希望を加味して、在宅勤務者を決めてはどうか」という意見もある。しかし、それでは、在宅勤務させることで、出社というストレス因子から回避させているだけだ。対症療法にすぎず、ストレス因子の解消という問題解決はできていない。
この状態を放置しておくと、職場におけるコミュニケーションの減少とエンゲージメントの劣化を加速させてしまう。また、在宅勤務者の決め方が曖昧であればあるほど、組織を分断してしまう危険性が高まる。出社しているコミュニケーションの担い手と、積極的にコミュニケーションに参加することのない在宅勤務の人を二分してしまう事態に陥りかねないのだ。
このように申し上げると、「在宅勤務は恒常化するので、コミュニケーションの量と質の低下は避けがたい」「解決は難しいので、コミュニケーションに積極的に参加したいという人が担い手になればよいのではないか」という見解に接する。
しかし、コミュニケーションによって生ずるストレスを解消できるとすれば、その解消策を実施してみたいと思わないだろうか。それは、誰でも、日常生活をしながら、多少の努力で、それほど長い時間をかけずに実施できる方法だ。そんなうまい話があるのかと思うかもしれないが、20年来、ビジネススキル発揮力を高める双方向演習プログラムを実施してきた中で、有効と分かった方法がある。
ストレスを解消するために
コミュニケーションの「コアスキル」を高める
コミュニケーションによるストレスを解消するためには、コミュニケーションスキルを高めて、ストレスを発生させないようにすることが一番だ。しかし、コミュニケーションスキルは、表現力や構成力など多岐にわたるスキルを組み合わせて発揮する複合スキルだ。複合スキルは、いきなり高めようと思っても、頭ではわかっても、行動や話法で繰り出せないという状況に陥りやすく、向上させるのが難しい。
このような複合スキルを発揮できるようになるためには、スキルをパーツ分解して、複合スキルを発揮しやすくするための元になる、「コアスキル」を見極めて、そのコアスキルを身に付ければよい。
コアスキルは、それ以上分解できない、とても単純な行動や話法になるので、誰でも身に付けやすく、すぐに発揮できる。コアスキルをひとつ身に付けると、次のコアスキルを身に付けることはより容易になる。コアスキル同士を組み合わせたり、連動させたりすることもしやすくなる。