世界でも最高レベル!日本人の「段取り力」Photo:troyzen/123RF

ほうっておいては停滞しがちなのが、グローバル・ビジネスの特色である。そこで、会議体のギアを上げるために効果的なのは、チームの中に強力な推進役を置くことである。ぜひ、その推進役を買って出たいところである。
米国の大学やハーバード・ビジネス・スクールで学び、総合商社で丁々発止のビジネスを行ってきた経験を踏まえて、現在、日本人の英語力向上とグローバル・リーダーの育成に携わる著者が、最新作『グローバル・モード』から抜粋してそのコツを紹介する。

自らイニシアティブを取り、何より、積極的姿勢で行く

 会議体のギアを上げるために非常に効果的なのは、チームの中に強力な推進役を置くことです。その推進役を買って出たいところです。

 ここまで述べてきた事前準備と共通するのが、受動的な姿勢からの脱却です。英語がそれほど得意でなくても、強烈にゴールを達成したいと願うあなたが積極的にチームをまとめていくことで、物事が前に進むのです。

 後述しますが、ほっておいては停滞しがちなのがグローバル・ビジネスの特色でもあります。段取りが得意なのであれば、そこで貢献する。自分の得意分野を活かしてどんどんリードしていきましょう。

 グローバル化とは、「欧米人がやりやすいように、私たちが自己を捨てて何でも受け入れる」ことではありません。また、グローバル社会=欧米社会でもありません。

 例えば、「さん付け」で呼ぶ日本語の文化は、Mr. Mrs. Ms.など性別という属性で敬称を変える英語文化より、よほど多様性に配慮のある表現です。近年では、海外のビジネスパーソンでも「Nori-san」のようにさん付けを使う人も出てきています。

 英語は共通言語として便宜上使っているだけで、英語のネイティブスピーカーがグローバル人というわけでもなければ、お手本だとも限りません

 英語圏の方に同化したいわけでも、西洋人になりたいわけでもなく、様々な国の人たちが交わる場、低文脈の環境で、効果的なコミュニケーションと物事の進め方、すなわちグローバル・モードを獲得したいだけです。 

 ミーティングでも「向こうのやり方に合わせよう」と受動的に挑むのではなく、自らイニシアティブを取り、チームをドライブする役割を担う、積極的な姿勢こそがビジネスの成功において有効だといえます。

 会議のアジェンダを高らかに宣言し、共有する役目は、自分たちがやりましょう。皆さんがイニシアティブを取るくらいの方が、会議はうまく運ぶはずです。

 なぜなら、私たちが普通に発揮している「段取り力」は、世界最高レベルなのだと私は信じています。英語が苦手でも、コツさえわかれば、会議の段取りくらいはお茶の子さいさいです。

 目の前にいる海外のビジネスパーソンは、英語が得意でグローバル社会での振る舞い方には慣れているかもしれませんが、ベストなビジネス・プラクティスを習得しているとは限りません。

 このような本を手に取り、ビジネススキルの研鑽に日々努力を惜しまない皆さんが負ける道理はないのです。

 英語にしても、「会議で活躍するための英語」と割り切れば、ぐんとハードルが下がります。イニシアティブを取れば、英語のハンディを克服することもできるのです。

 アジェンダは既に決まっていますし、アイスブレークも、会議体のプライド醸成も、事前の準備が可能です。逆に言えば、グローバル・モードを理解し、きちんと準備さえしておけば、心配する必要はまったくないのです。

世界でも最高レベル!日本人の「段取り力」
児玉教仁(こだま・のりひと)
イングリッシュブートキャンプ株式会社代表
ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー
静岡県出身。静岡県立清水東高等学校を卒業後、1年半アルバイトで学費を稼ぎ渡米。ウィリアム・アンド・メアリー大学を経済学・政治学のダブル専攻で卒業後は、シアトルでヘリコプターの免許を取得後帰国。1997年4月三菱商事株式会社入社。鉄鋼輸出部門に配属され様々な海外プロジェクトに携わる。2004年より、ハーバード経営大学院に留学。2006年同校よりMBA(経営学修士)を取得。三菱商事に帰任後は、米国に拠点を持つ子会社を立ち上げ代表取締役として経営。2011年同社を退社後、グローバル・リーダーの育成を担うグローバル・アストロラインズ社を立ち上げる。2012年よりイングリッシュブートキャンプを主宰。イングリッシュブートキャンプ社代表も務めるかたわら、大手総合商社各社をはじめ、全日本空輸、ダイキン等、様々な国際企業でグローバル・リーダー育成の講師としてプログラムの開発・自らも登壇している。