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日本では「仕事は何より大事」という意識も強く、いちいちリマインドしなくても皆ちゃんと動いてくれる。しかしグローバルでは、仕事はその人の人生の選択の1つにすぎない。だからこそ、きちんと優先順位を上げてもらえるよう、あの手この手で仕掛けていくことが重要だ。
米国の大学やハーバード・ビジネス・スクールで学び、総合商社で丁々発止のビジネスを行ってきた経験を踏まえて、現在、日本人の英語力向上とグローバル・リーダーの育成に携わる著者が、最新作『グローバル・モード』から抜粋してそのコツを紹介する。

優先順位を上げてもらえるよう、あの手この手で仕掛けていく

 これまでに、会議を進めるための3つのステップ(現状把握、ゴールの設定、実行フェーズ)を紹介しました。ステップ1に入る前にしておきたいことは、チームのギアを一段、上げることです。

「公」が「私」を凌駕する日本のローカルな環境においては、仕事を進めるうえで、いちいち大切だとリマインドしなくても勝手に相手が動いてくれるだろうという希望的観測が前提にあります。

 しかし、グローバルでは仕事は「私」の選択の1つにすぎず、だからこそ、ビジネスを成功させるためには、この会議体が重要であることをきちんと認識してもらい、各人の中での優先順位を上げてもらえるように、あの手この手で仕掛けていく必要があります。

 この会議が扱っている問題が「緊急課題である」と知らしめることは、この会議体が解決しようとしている問題がとても大切なものであると認識してもらううえで非常に有効です。

 ハーバード・ビジネス・スクールのジョン・コッター名誉教授は『リーダーシップ論』のなかで、変革を起こす8つのステップのうち、「緊急課題であるということの認識の徹底」を1番に挙げています。緊急課題でなければ、忙しい人はなかなか動かないからです。

 そのためにコッター教授は、「現在の危機的状況」「後々表面化しうる問題」「チャンス」を認識し、議論することがカギとなると述べています。

 特に強力なのは、現在、あるいは近未来に起こりうる悪いことや損失を前面に出すことです。人は「得をするより、損を回避したい生き物」だからです。

 アメリカで行なわれた実験で、セールスの人に、同じ商品を売る際に、「この商品を買うと、○○ドル得します」という言い方と、「この商品を買っていないので、現在、月に○○ドル損をしていますよ」という言い方をさせたところ、圧倒的に後者が売れた、という実験結果もあります。

 得をするよ、と言われても人はなかなか動きませんが、損をするかも、と言われると「それは困る」とばかり、即座に動き始めるのです。

 この応用で、「現在ある問題」がどれだけ損を出しているのか、どれだけマズイ状況なのか、会議で良い解決策が出なければどんな悲劇が待っているのかを、明示的に共有することで、会議体の“ギア”が一段上がるのです。

 会議体が大きな問題を解決するために集結しているのだということを全員がはっきり理解することは、当然ですが、会議体のプライドをもう一段押し上げることにつながります。

 とはいえ、「タバコは健康に悪い」などの抽象的な言い方やだらだらとした長い説明では心をつかむことはできません。

「タバコを1本吸うと、○分寿命が縮まる」「○分に1人、タバコのせいで早死にしている」というパンチの効いた1行が効果的です。アジェンダを伝え終わったタイミングで、危機感を共有するパンチラインを入れましょう。

 会議の種類別に、例を紹介していきます。