売上高2.5兆円ながら、日本の時価総額トップ20にランクインする空調機メーカー世界最大手のダイキン工業は、新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が混乱する中でも、ライバルに一段の差を付けようとすさまじい勢いで変革に動く。なぜダイキンは強いのか。今、何を変え、今後の成長チャンスをどこに見いだしているのか。1994年に社長に就任してから26年間、経営トップとしてダイキンを率いてきた井上礼之・取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 新井美江子)
コロナ禍で91の変革テーマを洗い出し、
「星取表」で進捗管理するダイキンの凄み
――ダイキン工業の新型コロナウイルス対策にはすさまじいものがあります。固定費圧縮などの「守りの43テーマ」、換気や高い空気質、殺菌ニーズの高まりなど、コロナによる社会変化を見据えた「攻めの31テーマ」、人工知能(AI)やIoTを活用した業務プロセス改革といった「体質強化、体質改革の17テーマ」を合わせた91の変革テーマを洗い出し、役員がリーダーを務める6つの緊急プロジェクトを作って具体的な施策に取り組んでいます。しかも、取り組みを徹底するために「星取表」を作って進捗をきちんとチェックしているとか。
ダイキンは透明性や説明責任というのを重く感じており、あることないこと――ないことはしゃべりませんけど(笑)、あることは何でもしゃべる会社だから徹底して見えるだけです。
――ダイキンにはこの危機をチャンスに変える「執念」すら感じます。そもそもどうやってこんな風に課題を細かくあぶり出していったんですか。
それ恐らくね、必ずしもうちの連中が独自に出したテーマじゃなくて、お客さんから問い合わせがあったり、いろんな要求をもらったりする中で出てきたテーマなんだと思います。
例えばコロナ発生後、研究開発における世界各拠点の長になる人を集めて何回も打ち合わせをしたのですが、コロナを機に「空気質」(除菌や換気などが施されたクオリティの高い空気)に高い関心を持つ人がグローバルでものすごい増えているという話が出まして。換気製品や空気清浄機、医療機関向けのフィルターなど、優れた空気を生み出すダイキン固有の技術や製品に対し、世界中から問い合わせが殺到していると。私は社長に就いてから26年間、経営トップにおりますけれども、初めてですよ、こんなこと。
実際に、うちは空気質に関してトップレベルの技術を持っている。家庭用のルームエアコンにしてもね、今、換気機能が付いている壁掛け型のエアコンは国内ではうちの「うるさらX」だけなんですよ。パナソニックも三菱電機も東芝も日立製作所も、他の空調は換気機能というのが全然付いていないんです。
もちろん、当社にも欠点はあります。空気清浄機が飛ぶように売れて5~6月は販売台数が前年同期比約200%に上っているというのに、委託生産していて中国でしか造っていないとか。