そんなあまりの「焼け石に水」ぶりを見ると、具体的な感染防止対策を出せないことから世間の目をそらすため、以前の「ロックダウン」のようなショッキングなことを、わざと言い出したようにも思えてしまう。

 それに加えて、この意味不明の発言にモヤモヤするのが、「東京都民は新型コロナウイルスをバラまく人々」という「東京差別」を、都知事が率先して助長している点だ。

地方で「バイ菌」扱いされる都民
移動制限は東京差別を助長する

 東京在住の人たちはあまり気づいていないだろうが、実は今、日本の地方で暮らす人々から、東京都民は「バイ菌」扱いされている。

 たとえば、感染者ゼロの岩手県の地元紙『岩手日報』には、緊急事態宣言下に故郷の岩手で営まれた父親の葬儀のために帰省したところ、親族から「万が一、おまえがウイルスを岩手に持ち込んで感染が広がったら、自分たちはここに住めなくなる」と懇願され、参列を諦めたというエピソードが掲載されている。

 要するに、東京都民はかつてのハンセン病患者やその家族へ向けられたような、いわれのない差別、陰湿な嫌がらせを受け始めているのだ。

 この中世の「魔女狩り」のようなジメっとしたムードは、政府の「移動自粛要請解除」によってようやく解消に向かっていたものの、それを台無しにしたのが小池氏なのである。「都民は他県へ行くな」という呼びかけによって、都知事自ら「東京都民はウイルスをバラまく危険な存在である」と、日本全国津々浦々に高らかに宣言してしまったようなものだ。

 これは、都民の命と安全を守る都知事として、最もやってはいけないことだ。

 たとえば、国の方針に素直に従っている人は、なんの後ろめたい気持ちもなく、家族を連れて故郷に帰省をする。しかし、この家族は故郷に足を踏み入れた途端、石を投げられるかもしれない。あるいは、郷土愛の強い「自警団」を気取った若者にからまれて、ボコボコにされるかもしれない。