FXは「ゼロサム」ゲーム

 FXも「投機」の一種といえます。

 「誰かの利益が誰かの損失になる」ものは一般に「ゼロサム(合計がゼロ)」ゲームと呼ばれます。

 為替の取引では、たとえばAさんが円を売って米ドルを買うときは、反対に米ドルを売って円を買うBさんがいるわけです。

 AさんとBさんのどちらかが儲かれば一方は損をし、AさんとBさんの損益を足し合わせれば「ゼロ」になると考えられます(下図)。

「投資なんてギャンブルみたいなもの」<br />というのは大きな誤解。<br />本来的な意味での「投資」とはどういうものか?

 実際には、FXでは売買手数料を支払うことになりますから、参加者全員の利益と損失を足し合わせれば若干のマイナスになります。

 胴元が寺銭(てらせん)を持っていくギャンブルほどではないにしても、投機的な取引であることは間違いありません。

 一方、「投資」では参加者全員が利益を得られる可能性があります。株式投資について考えてみましょう。

 たとえばみなさんがある企業に投資をした場合、その企業は投資してもらったお金を元手に新製品を開発したり設備投資をしたり海外に進出したりして、さらなる成長を目指します。

 そうやって出た最終利益は、原則として「資本を提供した株主のもの」になります。つまり、投資したすべての人がその果実を手にできることになるわけです。

 具体的には、投資家は投資先企業から配当をもらったり、企業の成長により株価が上昇すれば株を売却して値上がり益を手にしたりできます(下図)。

「投資なんてギャンブルみたいなもの」<br />というのは大きな誤解。<br />本来的な意味での「投資」とはどういうものか?

 株式投資に限らず、債券や不動産などに関しても同様です。

 「長期的な成長とそこから上がる収益に期待して資金を投じる」行動こそ、本来的な意味での「投資」であり、ギャンブルとはまったく性質の異なるものなのです。

朝倉智也(あさくら・ともや)
モーニングスター株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。98年モーニングスター株式会社設立に参画し、2004年より現職。第三者投信評価機関の代表として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。
主な著書に、『「つみたてNISA」はこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)など多数。