米国がん協会は「がん予防のための食事と運動に関するガイドライン」を8年ぶりに更新した。ポイントは次の通り。
(1)健康的な体重を維持し、太らないように気をつけよう。
(2)成人は週に150~300分の中強度の運動か、75~150分の高強度の運動をしよう。
青少年は少なくとも1日1時間の中強度~高強度の運動を。ゲームや動画視聴など、座りっぱなしになる行動は制限すること。
(3)健康的な食事パターンを取り入れ、適正な体重を維持しよう。
・野菜は濃い緑、赤、オレンジなど様々な色合いのものを摂り、食物繊維が豊富な豆類を食べる。
・果物も様々な色合いのものを丸ごと味わうこと。
・全粒粉のパンや玄米など全粒穀物を選ぼう。
・赤身肉や加工肉、加糖飲料、インスタント食品など高度加工食や精製された穀物を避けよう。
(4)アルコール飲料は飲まないのが最善だ。飲酒をやめられないときは、女性は1日1ドリンク、男性は2ドリンクまで。
ちなみに厚生労働省が推奨する適度な飲酒量はアルコール換算で20g程度/日だが、米国の1ドリンクは、アルコール換算14gだ。ビールの小瓶1本程度である。
Q&Aでは巷のうわさレベルの疑問に答えている。たとえば「食べ物を『レンチン』すると、がんリスクが増える?──いいえ。むしろ高温で肉を焼く、揚げるといった調理法で発がん物質が発生する可能性があります」などだ。
このほか「人工甘味料は発がんリスクがある?──適度な量なら問題ありません」「有機栽培の食品は発がんリスクを減らす?──科学的根拠はありません。高価な有機野菜より普通に売っている野菜や果物を適量食べる方が予防上の優先度は高いです」など、平易な回答が並んでいる。
一方、ビタミンCなど抗酸化成分のサプリメントやイソフラボンの服用は、一部のがんでリスクが上昇する可能性が指摘された。
がん予防の基本は、特別なことではなく、常識とお財布が許す範囲で「健康的な食生活と運動」を心がけることに尽きるようだ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)