判断が難しいダムの放流タイミング
気象予測の精度向上が頼みの綱

 このように事前の対応が難しい中、ダム建設時には想定していなかったレベルの集中豪雨が発生することによってダム決壊のリスクが発生し、止むを得ず豪雨のさ中に蓄えた水を下流に向けて放流するケースが、これまでの豪雨災害の中で何度か見られています。

 地球温暖化の本格化以降、数時間の間に集中して降る雨の量が想定外の規模になってきたことは事実ですが、ダム建設で生業を立てている人たちにとって、「そこまでは想定していなかったので」とは、口が裂けても言えないわけです。

 ただ、この3つめの問題は、これからの10年間における気象予測シミュレーションの精度向上によって、克服されるかもしれません。要するに、「どのダムが危なくなるか」がもっと高い精度で判明すれば、関係者は自信を持って水がめから放流することができるようになるからです。特に世界最高スピードのスーパーコンピュータ「富岳」が誕生したことで、その解決に希望がもてるかもしれないのです。

 さて、話をまとめましょう。集中豪雨災害は「まさか自分の家が!」と思うようなところで、しかもピンポイントで発生します。今は遠く離れた隣の県、隣の町の災害だったとしても、次の豪雨は自分の町にやってくるかもしれない。豪雨自体は広域的でありながら、甚大災害が起きる場所は1カ所に集中するタイプの災害です。よって、自分がその犠牲になることは想像しにくいわけです。

 心に留めておくべきは、そのような豪雨災害が2020年代の日本では激増すること。そして過去20年間に被害が起きた被災地は、実は自治体が作成したハザードマップである程度その危険が指摘されてきたということです。

 今回の集中豪雨の被災者に、心からお見舞いを申し上げます。読者の皆さんには、とにかく日本における集中豪雨災害のリスクが、過去にないほど高いレベルになっている事実を、再確認していただきたいと思います。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

【訂正】記事初出時より以下のように修正しました。
・2ページ目3段落の後半を以下のように変更:「そして、死者・行方不明者を合計すると、豪雨災害が542人、台風が92人、豪雪が152人となり、気象災害の中で集中豪雨の危険度が他を圧倒していることがわかります。」→「そして、経済的な被害に関してはその範囲が広範囲にわたる台風の方が怖いのですが、死者・行方不明者に関して言えば、合計で豪雨災害が542人、台風が92人、豪雪が152人となり、気象災害の中でも集中豪雨による死のリスクが大きいことがわかります。」
・2ページ目3段落下に以下の段落を追加:「ちなみに、台風巨大化によるリスクの高まりを受けて、気象庁では2018年に命名ルールを変更し、今後は台風についても命名頻度が増えることになるそうです。近年、台風も含め気象災害全般のリスクが増加していることは間違いない状況です。」
(2020年7月13日 12:20 ダイヤモンド編集部)