食事アンケート調査の結果を基に、総大豆食品、発酵性大豆食品、非発酵性大豆食品、個々の大豆食品(納豆、みそ、豆腐類)の摂取量を計算し、それぞれを四分位で4群に分類。がんの罹患に関連する可能性のある因子(年齢、性別、地域、肥満度、喫煙・飲酒・身体活動習慣、糖尿病の有無、膵臓がんの家族歴、コーヒー・魚類・肉類・果物類・野菜類の摂取習慣、総エネルギー摂取量)を統計学的に調整した上で、第1四分位群(摂取量が最も少ない群)を基準に、追跡期間(中央値16.9年)中における、その他の群での膵臓がん罹患リスクを比較した。
まず、総大豆食品摂取量との関連を見ると、第4四分位群(摂取量が最も多い群)は膵臓がんの罹患リスクが有意に高く(ハザード比1.48、95%信頼区間1.15~1.92)、総大豆食品摂取量が多いほど膵臓がんのリスクが高いという有意な関連が認められた(傾向性P=0.007)。また、非発酵性大豆食品(豆腐類、高野豆腐、油揚げ、豆乳)の摂取量との関連も有意で(傾向性P=0.008)、第3四分位群と第4四分位群で有意なリスク増大が認められた。その一方で、発酵性大豆食品(納豆、みそ)の摂取量と膵臓がんリスクの間には、有意な関連が見られなかった(傾向性P=0.982)。
次に、個々の大豆食品の摂取量との関連を見ると、豆腐類はその摂取量が多いほど膵臓がんリスクが高いという有意な関連が認められたが(傾向性P=0.007)、納豆(傾向性P=0.715)やみそ(傾向性P=0.667)の摂取量との関連は見られなかった。
総大豆食品摂取量が多いと膵臓がん罹患リスクが高くなる理由について、研究グループは「よく分かっていないが、動物実験からは非加熱大豆飼料を与えられた動物で下痢や膵臓の腫れが見られたと報告されており、また大豆に含まれるトリプシンインヒビターなどの消化酵素阻害成分による消化酵素や消化管ホルモンへの影響などが考えられる」という。
一方、欧米の疫学研究では今回の研究結果と相違し、インゲン豆、レンズ豆、エンドウ豆、大豆などを含むマメ科植物の摂取が、膵臓がんのリスク低下と関連することが示唆されている。この点については、「豆類の種類による含有栄養成分の違い(インゲン豆、レンズ豆、エンドウ豆は大豆に比べ炭水化物が多く脂質が少ないのに対して、大豆はタンパク質や脂質が多い)や、観察期間が欧米の研究(6~8.3年)より長いことなどにより、異なる結果になったと考えられる」としている。(HealthDay News 2020年7月6日)
Abstract/Full Text
https://cebp.aacrjournals.org/content/29/6/1214
Press Release
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8492.html
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