生涯最初の心筋梗塞発作から無事に生還した男性は「適量」の飲酒を心がけたほうが、その後の生存率がいいらしい。初発の心筋梗塞を生き延びた男性医療従事者、延べ2000人余りを20年間追跡した米国からの報告。
それによると、発作後も1日に純アルコール換算量で「10~29.9グラム」の適量を飲酒していたグループは、1滴も飲まないグループより心血管死のリスクが42%低下した。しかも、それ以外の死亡理由を含めた全死亡率でも34%リスクが低下している。また、心筋梗塞の発作前から適量飲酒を続けていると経過がよいことも示された。
適量飲酒が善玉「LDL」コレステロールを増やし、心筋梗塞など心血管系疾患に予防的に働くことは、広く知られてきた。しかし、発作後の長期飲酒に関し、具体的な数値が報告されたのは初めて。体格指数(BMI)などの影響を補正しても適量飲酒の効用は揺らがなかった。ただ同時に適量を超え、純アルコール換算で「30グラム以上」になると再び死亡率が上昇し始めることも示されている。飲酒量と心血管死とは、いわゆる「Uカーブ」の関係にあるらしい。
具体的な適量を試験で示された純アルコール量「10~29.9グラム」から換算してみよう。ビール(アルコール度数5%)なら、250~750ミリリットル未満、ロング缶で1本半ほど。ワイン(アルコール度数14%)好きなら、ボトル3分の1以下といったところ。純アルコール量の計算式は、飲酒量(ミリリットル)×度数(%÷100)×アルコール比重0.8である。昨晩の純アルコール量はどうだったか、計算してみるといいだろう。
ただ、もとより酒の適量は個人差が大きい。特に日本人は、アルコール分解酵素の働きがもともと弱いため「飲めない」人が半数近くを占める。今回の報告は米国での話。遺伝的体質や体格の違いを考えると適量のグラム数も若干、割り引いたほうがよさそうだ。
ちなみに厚生労働省が推奨する日本人男性の適量は純アルコール換算20グラム──ロング缶1本/日ということだそうだ。女性は体格の関係でさらに少ないほうがよい。ご注意を。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)