こうしたことから、当初は半年ごとの開催を目標としていた同会議は、2年間も開かれることがなかった。総選挙が近づき、急きょ8月中旬にネピドーで開催されるが、少数民族側からは独自の州憲法制定を求める動きが早くも始まっている。

ロヒンギャ問題が
政権のアキレス腱に

 そして、ミャンマーが抱える少数民族問題の中で、近年にわかに世界の関心を集めるようになったのが、西部ラカイン州を舞台としたロヒンギャ問題だ。

 そもそもは、仏教徒系住民とイスラム教徒のロヒンギャの対立にあったが、これに国軍が加担。17年8月、武装勢力アラカン・ロヒンギャ救世軍への掃討作戦として大規模展開される事態となった。

 戦闘により70万人を超えるロヒンギャが隣国のバングラデシュに逃れ、難民となった。この過程で、民族大量虐殺(ジェノサイト)があったとして国際司法裁判所にミャンマー政府が提訴されたのがこの問題の根源である。

 スー・チー氏は昨年末にオランダ・ハーグの国際法廷に立ち、国内問題と突っぱねた。その様子に7割のビルマ族国民は支持を表したものの、残る少数民族勢力の胸中は穏やかではなかった。停戦交渉の不調と相まって、これ以降ロヒンギャ問題は、政権の敏感なアキレス腱となっていった。

 さらに、ロヒンギャ問題は、アラカン軍問題にも発展した。

 アラカン軍とは、ロヒンギャ同様にラカイン州で活動する仏教徒ラカイン族の軍事組織アラカン軍のことだ。2009年ごろ発足した若い武装集団で、警察署を襲撃したり、海上でシージャックをするなど大胆な行動で注目されていた。

 その勢力が近年、ミャンマー北部や北東部にまで拡大。シャン州の少数民族武装勢力と「北部同盟」と呼ばれる連合軍事組織を結成したのだった。

 北部同盟の発足は、ミャンマー政府にとって連邦国家としての弱体化を意味する。このため、スー・チー政権は3月下旬、アラカン軍などを「テロ組織」と指定。新型コロナウイルスの感染拡大で停戦が相次ぐ中でも掃討作戦だけは継続している。

 政府が特にアラカン軍に関心を向けるのには、ほかにも理由がある。歴史の浅い同軍に対し戦闘技術を伝授しているのが、北部カチン州で武装闘争を展開するカチン独立軍。そして、資金提供に協力しているのが、東北部シャン州で3万人を擁するワ州連合軍だからだ。